シャイア・ラブーフの主演映画がイギリスでたった1人にしか鑑賞されず……
映画『トランスフォーマー』(2007)で世界的に大ブレイクした、俳優のシャイア・ラブーフ。しかし、制作した短編映画がパクりだと炎上したため、飛行機雲で謝罪の言葉を書き、「ふざけてるのか?」と、さらなる非難を呼んだ。バッシングに嫌気が差したのか、引退をほのめかして「オレはもう有名人じゃないし」と書いた紙袋を頭からかぶるといった奇行や、立て続けに酔っぱらってトラブルを起こし、ハリウッドの問題児としてタブロイドを騒がせる存在となっていった。
そんなシャイアが久しぶりに主演した映画『マン・ダウン 戦士の約束』がイギリスで公開された。大手調査会社「コムスコア」は4月5日、同作の全英オープニング・ウィークエンドの興行収入がたった7ポンド(約960円)だったと報道。イギリスの平均映画チケット代は7ポンド21ペンスなので、チケットは1枚しか売れなかったという計算になる。イングランドのバーンリーという街の「Reel Cinemas」という映画館1館のみで上映されたのだが、寂れた小さなというわけではなく、ごく普通の規模の映画館のようだ。
『マン・ダウン 戦士の約束』は、「深い心的外傷後ストレス障害(PTSD)を負った、米軍のアフガニスタン帰還兵が故郷に戻ると、街は崩壊し、家族も失踪」「変わり果てた故郷で妻と子を捜し、愛する家族を守ろうと奮闘する」という戦争サスペンス。監督は『陰謀の代償 N.Y.コンフィデンシャル』(11)のディート・モンティエルで、シャイアとは『シティ・オブ・ドッグス』(06)以来のタッグを組んだ。
同作は15年のヴェネツィア国際映画祭で『マン・ダウン 戦士の約束』が上映されたが、観客からブーイングが上がったり、観客が上映中に次々と退場したりと不評だった。業界からの信頼度が高い「ロジャー・イーバート映画評論サイト」も、「PTSDや戦争の恐ろしさという非常にデリケートな問題を、“曖昧で混乱するような”描き方で表現していると酷評。英紙「ガーディアン」は「シャイアの演技は真に迫っている」ものの「救いようのない作品」だとして星2つという厳しい評価。米業界紙「ハリウッド・レポーター」は「戦争ものかと思えばSF、ファミリーものかと思えば心理学的になったりと、ジャンルが定まらない。見当違いも甚だしく、仰々しい作品であり、シャイアの演技も台無し」と切り捨てるように評価していた。
近年ショートフィルムには頻繁に出ているシャイアだが、ハリウッド大作映画に出演するのは『フューリー』(14)以来。『フューリー』撮影中には「役作りのためずっとシャワーを浴びず、共演者から激怒された」というウワサが流れたが、作品は大ヒット。シャイアは「ブラッド・ピットに、精神的に支えてもらった」と明かし、彼に恥をかかせないよう、宣伝活動の間はトラブルのもととなっていた酒を断ったともいわれている。
シャイアは今回の『マン・ダウン戦士の約束』も手を抜くことなく、全力で撮影に臨んだ。「これほどまでに精神的に大変な役を演じるのは初めてだ」と、自殺願望を持つくらいに自身を追い込みながら役を演じたことを明かしている。それなのに、全英オープニング・ウィークエンドの興収は、たった7ポンドだったのだ。