芸能人の「素⼈イジリ」はどこまでOK? 弁護⼠に聞いてみた
「ドラマのこのシーンってありえるの?」「バラエティーのあのやり⽅ってコンプライアンス的にどうなの?」……テレビを⾒ていて感じた疑問を弁護⼠に聞いてみる、テレビ好きのための法律相談所。
<今回の番組>
『ヒルナンデス!』(⽇本テレビ系)、『⽔曜⽇のダウンタウン』(TBS 系)
<今回の疑問>
芸能⼈の素⼈イジリはどこまで許される?
今やテレビで⾒ない⽇はないマツコ・デラックス。多くのバラエティー番組のレギュラーを持つマツコだが、『マツコ会議』(⽇本テレビ系)、『マツコの知らない世界』(TBS 系)など、司会のマツコと⼀般⼈だけで番組が成り⽴つのは、マツコにしかできない絶妙な「素⼈イジリ」のなせる技だ。
バラエティー番組において、素⼈イジリは⽋かせないものとなっているが、ときにはそれが炎上することもある。昨年11 ⽉、『ヒルナンデス!』(⽇本テレビ系)で、ロケ中に道を教えてくれた年配男性の⾔葉に対し、「なまっている」とロケメンバーが笑う⼀⾯があり、「ご⽼⼈をバカにしている」と批判が続出し炎上、また『⽔曜⽇のダウンタウン』(TBS 系)で、何も知らないエキストラの背中に「バカ」と書かれた張り紙を密かに貼り付け、それに気づくかという企画に、「イジメみたいで笑えない」といった批判が殺到した。バラエティー番組における素⼈イジリに、ボーダーラインはあるのだろうか? アディーレ法律事務所の岩沙好幸弁護⼠に話を聞いた。
「このような企画の全てがダメだ、というわけではありませんが、場合によっては侮辱罪や名誉棄損罪が成⽴する可能性があるので注意が必要です」
侮辱罪や名誉棄損罪について、岩沙弁護⼠は次のように説明する。
「侮辱罪は、事実を摘⽰しないで公然と⼈を侮辱すると成⽴します。『公然』とは、不特定または多数⼈が認識できる状態をいいますので、テレビでの放送はこれに当たります。また、『侮辱』とは他⼈に対する軽蔑の表⽰をいい、『なまっている』『バカ』という⾔葉も、場合によってはこれに当たります。なお、侮辱罪の法定刑は拘留、または科料という刑罰が科せられます。
⼀⽅、名誉毀損罪は公然と事実を摘⽰し、⼈の名誉を毀損した場合に成⽴します。『名誉を毀損』とは、⼈の社会的評価を下げることをいい、『侮辱』と厳密には異なりますが、ほぼ同じと捉えてよいでしょう。名誉毀損罪の法定刑は3年以下の懲役もしくは禁錮⼜は50万円以下の罰⾦となります」
ならば、⼀般⼈のインタビューにおける規制等はあるのだろうか?
「⽇本⺠間放送連盟の放送基準で規定されるものとして、(1)個⼈・団体の名誉を傷つけるような取り扱いはしない。児童および⻘少年の⼈格形成に貢献し、良い習慣、責任感、正しい勇気などの精神を尊重させるように配慮する。(2)放送内容は、放送時間に応じて視聴者の⽣活状態を考慮し、不快な感じを与えないようにする。(3)⽅⾔を使う時は、その⽅⾔を⽇常使っている⼈々に不快な感じを与えないように注意する、などがあります。仮に法律的には問題がなかったとしても、視聴者が不快感を覚える可能性がある、あるいは道義的に問題ある企画に関しては⾃粛すべきでしょう」
番組スタッフが⾯⽩いと思っても、視聴者にとっては不快に感じる場合もある。「素⼈イジリ」に対し、制作側はいま⼀度考慮すべきではないだろうか。
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