『鳥人間コンテスト』は事故が起きても、なぜ打ち切りにならないのか?
「ドラマのこのシーンってありえるの?」「バラエティーのあのやり方ってコンプライアンス的にどうなの?」……テレビを見ていて感じた疑問を弁護士に聞いてみる、テレビ好きのための法律相談所。
<今回の番組>
『衝撃のアノ人に会ってみた!』(日本テレビ系/3月23日)
<今回の疑問>
事故の起きたバラエティー番組が打ち切りになる基準は?
3月23日に放送された『衝撃のアノ人に会ってみた!』(日本テレビ系)に、過去の『鳥人間コンテスト』(日本テレビ系)で話題になったパイロットたちが出演し、再び注目を浴びた。今年の夏で40回目を迎える『鳥人間コンテスト』だが、感動の舞台の裏では悲惨な事故も起きている。
2006年大会には東京工業大学のチームの機体が崖に衝突し、パイロットが踵骨の粉砕骨折と顔面裂傷し、その後遺症が残るという大事故、翌年07年大会では、パイロットとして参加した女性が滑走中に機体が破損、約10メートルの高さから湖面に落下し、その衝撃の影響と思われる「脳脊髄液減少症」という後遺症を患うという事故が起きた。女性は、制作の読売テレビと事故当時在籍していた大学、人力飛行機を制作したサークル顧問や責任者相手に損害賠償を求める提訴をしている。通常、このような事故が続けば、番組は打ち切りになってもおかしくはない。なぜ「鳥人間コンテスト」は打ち切りにならないのだろうか? アディーレ法律事務所の岩沙好幸弁護士に話を聞いた。
「『番組で事故が発生した場合は、番組を打ち切らなければならない』と定める法律はありません。どのような場合に番組を打ち切るかは各放送局の裁量に委ねられています。もっとも、各放送局は、BPO(放送倫理・番組向上機構)の放送基準や犯罪の成否などを総合的に考慮して打ち切るかどうかを検討します。まず、BPOは表現の自由を確保しつつ、視聴者の基本的人権を擁護するため、放送への苦情や放送倫理の問題に対応する第三者機関です。主に、視聴者などから問題があると指摘された番組・放送を検証して、局に意見や見解を伝え、放送界の自律と放送の質の向上を促す役割を担っています。
そこで定められた放送基準には、(1)人命を軽視するような取り扱いはしない。(2)放送内容は、放送時間に応じて視聴者の生活状態を考慮し、不快な感じを与えないようにする。(3)人心に動揺や不安を与えるおそれのある内容のものは慎重に取り扱う、などがあります。これに抵触する場合は、放送局に対して、勧告、見解、意見の通知を行います。なお、放送局に命令、指示など強制力をもって義務を課す権限はありませんので、各放送局がBPOの判断をもとに検討して、自主的な判断を下します」