アイドルや宗教は家族の代わりになるか? 無縁の共同体の可能性――佐々木俊尚×白河桃子対談
――「夫婦」は共同体の最小単位ですが、それでは満たされないものがある、ということでしょうか?
白河 日本の夫婦は、愛情はアイドルで代替というカップルもいる。ただ、「結婚なんて馬鹿らしいよね」「アホらしいよね」と、家族からの脱却を主張していた女性たちも「婚活」をする時代です。婚活ブームでびっくりしたのは、やっぱりみんな結婚したかったのかと。それは、結婚に代わる新しい共同体や男女の形が、まだまだ見つかっていないからだと思いますが。
佐々木 景気の減速もあるんじゃないですかね。
白河 それも大いに関係していますね。リーマンショックと婚活ブームって重なったんですよ。経済的な不安を持った人が、経済的に頼れるものを求めて婚活に走ったんです。
佐々木 「結婚しない」「子どもを産まない」という自由主義的で、多様性のある生き方の追求が少しずつ広がってきていたはずですが、結局、リーマンショックや東日本大震災があってから、すごい勢いで景気が減速して、やっぱり「結婚した方が安心だよね」となった。また、生き方の選択肢は増えれば増えるほど、公務員志望者が増えるともいわれますよね。でも全員が公務員にはなれないので、多様な生き方を引き受けざるを得ないのが今の状況ですよ。
――女性にとっては、自由なことが、逆に不自由だということでしょうか?
佐々木 自由ってつらいですよ。たとえば、誰の命令でもなく自分で相手を選んだとして、失敗すると自分で責任を取らなきゃいけないですよね。一方で、お見合い結婚って、今ほとんどなくなっちゃいましたけど、結婚した相手の出来がよくなくても、これは私が選んだ相手じゃないからって諦められる。自由はないけれども、気が楽だという考え方もありますよね。
白河 日本だと、まだまだ夫に経済を頼る結婚が多い。女性は子育てをすることが主流で、夫はお金を持ってくる役割を担っている。片や、フランスだと保障があって、シングルマザーでも仕事をしながら子育てできる体制が整っているんです。最悪、仕事を失っても子育てだけはちゃんと国が支えるというメッセージを発信しているので、出生率が上がっています。それに比べると、日本はまだまだ多様な家族のあり方を受け入れられていないと思います。