親が離婚した子の「幸せ」とは? わが子に会えない父親の本音と「親子断絶防止法」の意味
今年2月、歌手の高橋ジョージが『モシモノふたり』(フジテレビ系)で、タレント・三船美佳との離婚後、子どもと会えなくなった父親としての心情を吐露して話題を呼んだ。現在、国会では、未成年の子どもがいる夫婦の離婚に際し、離別した親と子どもの断絶を防ぐ「親子断絶防止法案」が検討されている。子どもの健全な発育のために、親権者による一方的な面会拒否は避けるべきという意見と、DV被害者が危険な状態に置かれてしまうという見方もあり、議論を巻き起こしている。離婚や別居によって親権を失い、子どもと面会ができない父親たちの声を集めたルポタージュ『わが子に会えない 離婚後に漂流する父親たち』(PHP研究所)の著者・西牟田靖さんに、このような境遇に置かれた父親たちの現状と問題点について聞いた。
■父親が子育てに参加していても、調停や裁判では母親側が有利
――離婚後、子どもに会えない父親を取材することになったきっかけはなんですか?
西牟田靖さん(以下、西牟田) ちょうど3年前に自分自身が離婚を経験しました。元妻が子どもを連れて実家に帰り、そのまま離婚に至ったのですが、あまりの喪失感でその頃の記憶は曖昧になり、体重が10キロも減少するほど憔悴しました。その様子を見かねた先輩のノンフィクション作家から「共同親権ネットワーク(kネット)」という団体を教えてもらい、当事者たちの交流会に参加しました。そこで自分よりも過酷なケースを知るにつれ、これは社会問題だと気がついたんです。
――18人の父親たちのケースが本書には登場しますが、どのように選んだのですか?
西牟田 自ら立候補してくださった方と、出会った中で特にひどい経験をされた方にお願いした二通りです。「ひどい経験」というのは、父親側からすると非がないように見えるのに、全く面会できないという方です。『レ・ミゼラブル』のジャン・バルジャンのように、一切れのパンを盗んだだけで投獄されるようなことがあるんです。
――本書には「DV加害者という濡れ衣を着せられた」と主張する方も多く登場しましたが。
西牟田 実際の真相はわかりませんが、本人はその意識がなくとも、語気が鋭いために精神的DVと捉えられてしまったのではと感じる方もいましたし、グレーなのではと感じるケースもありました。一方で、父親が子育てに参加して子どもと良好な関係を築いていても、調停や裁判にもつれ込んだときに弁護士が母親側に有利に進めるために、ちょっとしたことをDVと疑われるケースもあります。
――子どもへの愛情より、「DVの濡れ衣を晴らしたい」「身の潔白を証明したい」「奥さんに一泡吹かせてやりたい」という気持ちが強いのでは、と感じる方もいましたが。
西牟田 それに関しては、離婚調停・裁判の過程の中で、怒りの燃料投下をされて炎が大きくなったのではないでしょうか。お互いの落ち度を指摘し合うのが調停や裁判ですから、泥沼の地獄を経験すると、どうしてもそうなってしまいます。