カルチャー
『東京タラレバ娘』レビュー

『東京タラレバ娘』で“説教芸”に興じる東村アキコは、愚かなお笑い芸人のようだ

2017/03/15 21:00
『東京タラレバ娘』(講談社)

3月22日に最終回を迎える『東京タラレバ娘』(日本テレビ系)。ドラマの内容が話題になる中、漫画は発売当初からそのメッセージ性に対する議論が巻き起こってきました。8巻が4月に発売予定で、ドラマが最終回を迎えようとする中、同漫画について少女マンガ研究家の小田真琴が語ります。

◎女性を罰しつつ、言い訳を繰り返す東村
 筆が重いし、気も重い。東村アキコ先生のことは大好きだった。おしゃれすることの喜びに溢れた『きせかえユカちゃん』(集英社)、ウイング関先生という稀代のオタクキャラを創造した『ひまわりっ ~健一レジェンド~』(講談社)、そして最高傑作と言っても過言ではない『かくかくしかじか』(集英社)。どれもマンガ史上に残る傑作であるし、個人的にも思い出深い作品ばかりだ。ところが『東京タラレバ娘』(講談社/以下、タラレバ)と来たらどうだろう。これは女性を罰し、自己責任を押しつけ、主体性を奪うマンガではないのか。私には今の東村先生が、売れた途端にスーツをまとい、万能感を持って偉そうに世相を斬り始める愚かなお笑い芸人のように見える。

 序盤こそ強く、切れ味鋭いメッセージを次々と繰り出して、いかにも瞬発力の作家である東村先生らしい作品だと感じ入ったのだ。ところが物語が続くうちに疑問ばかりが募りゆく。それは主に卑劣なダブルスタンダードによるものだ。

 たとえばあとがき。東村先生の「おまけマンガ」と言えば、バルセロナ五輪男子マラソン銀メダリスト・森下広一選手への一方的な愛を『海月姫』(講談社)1巻から3巻にわたって描いた「クラゲと私とバルセロナ」をはじめとして名作揃いなのだが、タラレバのそれにおいては醜悪な言い訳が冗長に展開される。いわく、「別に私は『女は結婚しなきゃダメ』とか『女の幸せは男で決まる』とか『結婚できない女はかわいそう』なんて全く思ってません」とのこと。

 一方、本編では平気でこんなことを言ってのける。「30過ぎたら女は『愛する』よりも『愛される』幸せを選ぶんタラ!!」「酔って転んで男に抱えて貰うのは25歳までだろ。30代は自分で立ち上がれ。もう女の子じゃないんだよ? おたくら」「才能なんて関係ないんタラレバーッ。そうレバ、この世は金とコネと……そして女は若さと美しさタラ!!!」「女は結婚すればセコンドにまわって、旦那さんや子供をサポートしながら応援して生きていくレバ」。

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