AV出演強要問題、メーカーはどんな罪になるのか? 法的責任を弁護士に聞いた
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AV出演強要問題でメーカーの法的責任は?
人気ユーチューバーの女性が、過去に騙されてAV出演した経験を打ち明け、話題になっている。女性は自らイベントなどで被害防止を訴えているが、近年「AV出演を強要された」という女性の被害が社会問題視されている。こうした被害の法的責任をAVメーカーに問うことは可能なのだろうか? アディーレ法律事務所の岩沙好幸弁護士に聞いた。
まず、「AVメーカーに民事責任や刑事責任を問うことは簡単ではない」と岩沙弁護士は述べる。しかし、以下のような罪に当たる場合もあるという。
「さまざまなパターンがありますので一概には言えませんが、AV出演を強要することは強要罪、意に反して撮影が行われた場合は、強姦罪、集団強姦罪、暴行罪、傷害罪、監禁罪などが成立する可能性があります。もっとも、同意を推認させる契約書があること、さらに強要の証拠が少ないことから、刑事責任が問われる例はほとんどありません。多くの場合、撮影は密室で行われ、契約書で女性の同意があることを前提として行われるため、事実、女性の意に反する撮影だったとしてもその証明が難しいのです」
過去の裁判例では、AV撮影中に激しい暴行を加え、女優が撮影の中止を求めたにもかかわらず、長時間にわたり数十回の姦淫を繰り返した非常に悪質な事案に、強姦致傷罪などが適用された例はあるが、関係者が罪に問われる例は非常に少ないという。
では、仮にメーカーが起訴された場合、すでに販売されたDVDを回収することは可能なのだろうか?
「メーカーが強要罪などで起訴されることとDVDを回収することは全く別の手続きなので、起訴されたからといってDVDを回収できるわけではありません。販売を中止するためには、別途裁判手続きを利用する必要がありますが、AV出演を強要された場合でも、裁判所による販売差し止めが認められることはほとんどありません。出演や販売に同意する契約書がある上、虚偽の説明や脅迫の証拠が残っていないことが多いからです」
岩沙弁護士は「AV出演強要は、女性に対する人権侵害であることは明らか」と述べている。被害者保護のためにも、業界を規制する法律を早急に制定する必要があることは間違いないようだ。
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