タイ語学校の学生からステップアップで現地社長に! ゴルフ三昧で優雅に暮らす女性【日本を捨てる女性たち】
■プライベートをしっかり確保できるから、ゴルフ三昧
すっかり仕事とタイ生活になじんだのりこさんに、大きな出来事が訪れる。会社が香港に拠点を移すことになったのだ。社長も香港へと移る。では誰がタイの会社を管轄するのか。バンコクの社長はどうするのか。のりこさんに白羽の矢が立てられた。
「初めは断りました。無理だと思って。でも何度か説得されて、そこまで言われたら……とがんばってみる気になったんです」
語学学校の学生から始まって、現地採用の社員となり、ついには現地社長にまで登りつめたのだ。あやしげな路地裏のアパート生活から、スクンビットの高級コンドミニアムへ。こんなステップアップも、タイの日本人社会の中では決して珍しくはないのである。
「でも会社全体を管理するようになって、やっぱり悩みは人間関係かな。社員同士の不満やトラブルが寄せられて、それを解決していくことは骨が折れます。日本でのホテル時代と、本質的には変わっていないのかも」
ストレス解消は、お酒とゴルフだ。
「仕事は仕事。プライベートをしっかり確保できるのはタイのいいところです」
タイには純日本風の居酒屋はたくさんある。また「ゴルフ天国」とも言われている。
「タイでは一人ひとりにキャディがついて、つきっきりで世話をしてくれます。本当に至れり尽くせり。週末はコースに出て、平日も打ちっぱなしによく行ってます」
この先どうするのか。まだ考えてはいない。
「いつかは日本に帰りたいな、と思います。でも帰っても年齢的に仕事があるかどうか。それにタイで暮らしていると、日本と違って、結婚だとかいろいろプレッシャーをかけられることもないので、居心地がいいんです。この気楽な雰囲気の国にいると、気がついたら3年くらいすぐにたっちゃって、そこだけが困りものですね」
タイの中の日本人社会。それは拡大を続ける一方だ。のりこさんの後に続く若い女性も、次々にやってくる。
「タイにはチャンスはたくさんあると思います。でもこの数年、ちょっと認識の甘い子が増えているようにも感じますよね。誰でも簡単に仕事が見つかるわけじゃない。日本での社会人経験がなければタイでもいい仕事には就けないでしょう。そんなに簡単なものではないと思います」
タイのような弛緩した社会では、在住の日本人たちもどこか「ゆるく」見える。しかし誰もが、異国で生きるため、誰に言わずとも苦労をしているのだ。
(室橋裕和)