有名受刑者は、塀の中では“芸能人”! 世間を騒がせた「あの女性犯罪者」の素顔
覚せい剤の使用や密売などで逮捕起訴され、通算12年を塀の中で過ごした後、その経験を基にさまざまな活動を続ける中野瑠美さんが、女子刑務所の実態を語る「知られざる女子刑務所ライフ」シリーズ。
■女子刑務所は殺人犯から万引き常習犯まで一緒
女子刑務所と男子刑務所との違いはいろいろありますが、やはり女子受刑者の人数が男子の1割くらいしかいないことは最大の特徴でしょうか。やっぱり女子は悪いことしないんですよ……って私はしましたが(苦笑)。
なので、男子は犯罪傾向とか刑期とかでいくつかに分類されるのですが、女子は初犯と累犯の分類くらいで、基本的に「殺人犯から万引き常習犯まで一緒」です。初犯の時は「もうムショに戻ってこないように」という配慮からか刑務官もけっこう厳しいのですが、再犯になると「また来たのか」「作業教えんでもできるヤツが来てラッキー!」という態度になります。
私たち受刑者も最初はビクビクしていても、時間がたつと刑務官に対して「うちらあってのアンタらやろ」「ありがたく思え」となっていきます。そして、少ない人数の中ですから、世間を騒がせたあの事件のあの人たちとも一緒になることも多いわけです。
■特別扱いの「芸能人」
施設によって違う隠語も多いのですが、私が“お勤め”した和歌山刑務所や栃木刑務所などは、有名な犯罪者は「芸能人」と呼ばれていました。たぶんどこも同じじゃないですかね。
栃木には昨年夏までタレントの小向美奈子さんがいらっしゃいましたが、こういうガチの芸能人だけではなくて、整形しながら逃亡を続けた福田和子さんや、夫を殺してバラバラにした三橋歌織さんも有名なのでムショでは芸能人ということになります。
刑務所や拘置所は、とにかく「事なかれ主義」なので、トラブル発生に敏感です。自殺なんてもってのほかですが、まあたまにありますね。私も初犯の時はいじめられて死にたくなったことはありますし。やっぱりいじめのターゲットになるとキツいですね。みんなストレスがたまっているので、イライラしていて、弱い者をいじめたくもなるのでしょう。女だけの世界なので、態度が鼻につく女や目立つ女も標的になりますね。
だから、施設側は特に芸能人には気を使うのです。有名な受刑者がいじめを受けたり、自殺されたりしたら、マスコミが黙っていないからです。偉い人たちはマスコミと法務省に弱いんですよ。普通はこのような芸能人さんたちと、ほかの受刑者とは接触させませんが、福田和子さんは、なぜか普通に工場に出てきていました。なかなかの「女親分」的な雰囲気を持っていましたよ(笑)。これは珍しいケースだと思います。
だいたいの芸能人は、「昼夜独居」といって、ずっと独房で洗濯ばさみを組み立てたりデパートの紙袋に取っ手をつけたりしてます。ほとんど誰とも話さないので、失語症になることも多いそうです。あとは幻聴や幻覚、異常行動などの拘禁反応もありますね。福田さんは病気で獄死されましたが、たまに獄死もあります。酒もタバコも、もちろん薬物もNGで、早寝早起きの生活ですから、シャバにいるよりも健康で長生きできる人もいますが、医療体制にいろいろと問題があって持病が悪化する場合もあるのです。