栄養ドリンクの真実(前編)

「タウリン配合」はまったく意味ナシ!? 栄養ドリンクはホントに効くのか医師に直撃

2017/02/18 19:00

 それに対し「疲労感」というのは、“疲れた”と感じる感覚的で曖昧なもの。激しい運動でも、楽しければ疲れは感じにくいでしょ。逆に、会議などつまらないことをしていると座っているだけですぐに疲れた気がしますよね。つまり、実際の疲労度合いと疲労感は大きく異なります。そのため「疲労感」だけ取ってしまえば、「疲れが取れた」と錯覚させることができてしまうんです。

――タウリンに疲労回復の効果はまったくないんですか?

梶本 タウリンは肝機能を改善する効果は報告されていますが、元来は神経を鎮める作用がある抑制物質ですから、そもそも元気になるはずがないんです。実際、CMでも「タウリン○ミリグラム配合」と謳っているだけで、「タウリンが疲労に効く」とは一言も言ってません。もし、製薬会社が「タウリンが疲労に効果がある」と宣伝すると薬機法違反です。もし「タウリンが疲労に効く」という印象を持たせているなら、巧妙なイメージ操作です。

――風邪薬と栄養ドリンクを一緒に飲むと回復が早いといわれていますが、併用で効果的になるということはないんですか?

梶本 風邪薬には抗ヒスタミン剤が入っているので、眠気を誘います。カフェインを同時に摂取すると一時的にその眠気を覚ましてくれるので、感覚としてなんとなく元気になった気がするだけのこと。風邪薬の効果が増すわけではありません。


◆栄養ドリンクをめぐる大人の事情

――では、なぜ効果のない栄養ドリンクが、長年、疲労回復薬のように扱われているのでしょうか?

梶本 リポビタンDなどが発売された1962年頃は、脚気という疾患が問題となるほどビタミンB1が不足した時代です。だから、当時はビタミンB1を補給することに意味があったと思います。しかし、栄養ドリンクはこれまで一度たりとも偽薬を対照としたヒト臨床試験で抗疲労効果が実証されたことはなく、人に対して抗疲労効果が実証された医学論文もありません。ビタミンが不足してるから「補給したら効くであろう」という発想だけで承認された、55年前の既得権益であり、飽食時代の今となっては時代錯誤ともいえます。

 日本には、残念ながらそのような既得権だけで発売されているものの、実際には効果が疑わしい医薬品がたくさんあります。ただ、日本の製薬会社が出している栄養ドリンクを例に挙げると、年間2,500億円といわれる売上高のかなりの部分が広告料として使われています。だから恩恵を受けているマスコミは、事実を書くことができないんでしょうね。今までその科学的事実を放送してくれたのはNHKだけ。事実、民放局や雑誌で私がそのことを語っても、全てカットされてしまいます(笑)。

――最近、いくつもの種類が出回っているエナジードリンクはどうなのでしょうか?


梶本 栄養ドリンクは医薬部外品なのですが、エナジードリンクは清涼飲料水の扱いです。そのため、成分内容量の表示が義務づけられておらず、公表されていないんです。おそらくカフェインが大半だとは思いますが、公表されていない以上、検証もできないのでなんとも言えません。ただ、アメリカの小児学会で最も権威ある雑誌では「有用性がないだけでなく子どもに飲ませるのは危険」と注意喚起されていて、米国医師会も「エナジードリンクは子どもに与えるべきではない」とはっきり書いています。しかし、それも日本の大手マスコミでは報道されていません。

(後編につづく)

梶本修身(かじもと・おさみ)
1962年生まれ。大阪大学大学院医学研究科修了。医師・医学博士。現在、大阪市立大学大学院医学研究科疲労医学講座の特任教授で「東京疲労・睡眠クリニック」の院長を兼任。著書『すべての疲労は脳が原因I』『同II』(集英社)は15万部を突破するベストセラー。『たけしの健康エンターテインメント!みんなの家庭の医学』(テレビ朝日系)、『ためしてガッテン』(NHK)、『ホンマでっか!?TV』(フジテレビ系)など出演多数。

最終更新:2017/02/20 14:55
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イメージを変えるのは現実を変えるより大変