畠田理恵さんは、山田美保子とやくみつるを20年前の名誉毀損で訴えられるのか?
「ドラマのこのシーンってありえるの?」「バラエティーのあのやり方ってコンプライアンス的にどうなの?」……テレビを見ていて感じた疑問を弁護士に聞いてみる、テレビ好きのための法律相談所。
<今回のテーマ>
畠田理恵さんの過去の報道被害に関するツイート
■損害賠償請求をすることは可能だが……
棋士の羽生善治の妻、元女優の畠田(現・羽生)理恵さんが約20年前の報道被害についてツイートを連投して波紋を呼んでいる。
特に攻撃がひどかった放送作家・山田美保子と漫画家・やくみつるの名を挙げ、2人が「金持ち玉の輿狙いの上昇志向の強い女」などと週刊誌に書いたり、テレビのワイドショーなどで発言したりしたため、そのイメージが世間に定着したと訴えている。さらに結婚当時、「玉の輿狙い成功!計算高い女!等々の報道に苦しめられ、総合失調症(編集部注・統合失調症)に悩まされ、結婚式の日までに体重は34キロまで減少していました」などとも綴っている。
こうした過去の報道被害について、山田とやく、週刊誌等を訴え、慰謝料を請求することは可能なのだろうか? アディーレ法律事務所の吉岡一誠弁護士に聞いた。
吉岡弁護士によると、不特定または多数の人が認識できる状況下において、人の社会的評価の低下をもたらしうる具体的事実を示した場合は名誉毀損罪(刑法230条1項)に該当し、事実を示さずに単に侮辱した場合は侮辱罪(刑法231条)に該当するという。
「名誉毀損行為や侮辱行為は、民法上の不法行為(民法709条)にも該当しうるものであり、このような行為により精神的苦痛を被った場合、被害者は加害者に対して損害賠償請求をすることが可能です」
つまり、山田の「畠田理恵は金持ち玉の輿狙いの上昇志向の強い女」との発言、やくの「金持ちを横取りする玉の輿狙いの女」との発言、報道機関の「玉の輿狙い成功!計算高い女!」といった報道は、いずれも具体的事実を示すことなく、理恵さんの社会的評価を下げる発言・報道をしたもので、侮辱行為に該当する。したがって、理恵さんは、精神的苦痛を被ったとして、山田らに対して損害賠償請求をすることが可能なのだ。
しかしながら、今回の場合は訴えを起こすのが難しいようだ。
「不法行為に基づく損害賠償請求権は、被害者が加害者と損害を知った時から3年が経過することで、時効により消滅するとされています(民法724条)。したがって、被害者である畠田氏が裁判を起こして損害賠償を求めても、時効により請求権が消滅したと反論されれば、請求は棄却されることとなるでしょう」
さすがに20年も前の被害を今になって訴えても、その賠償は認められないということのようだ。理恵さんの苦痛が、ツイートに吐き出した言葉で少しでも解消されていればよいのだが……。