カルチャー
[女性誌速攻レビュー]「婦人公論」2月14日号

「婦人公論」の熟年婚活必勝法が、「CLASSY.」のトンデモ婚活と同じだった絶望感よ……

2017/02/10 17:00

■ラスボス・八千草薫の存在感

 続いては「『熟年結婚』してみたら」。この企画の冒頭のインタビューが「恋に生きる女」の代名詞、女優の荻野目慶子というところから心躍ります。

 「20代、30代に恋愛スキャンダルで好奇の目に晒されたことなどから」トラウマを抱え、男性不信に苦しんでいたという荻野目が結婚したのは48歳のとき。相手は医師。荻野目いわく、今まで付き合ってきた芸術家肌の男たちとは異なるタイプだったよう。お互い大事な人を失ったという共通の経験があり、すぐに惹かれあったものの、「若くはない年齢で出会った私たちは、互いに苦労を重ねてきたため、一緒に暮らし始めてからも結婚相手としてやっていけるか、探り合い、確かめ合っていた気がします」とごく慎重。「夫婦であっても他人です。結婚したら孤独でなくなるというのは幻想」という言葉は、熟年結婚ならではなのかもしれません。

 いやしかし、本当に知りたいのは恋愛経験が芸の肥やしになる女優の熟年結婚論ではなく、実際現場で戦っている女たちの叫び。「写真はプロに、そして個性は消すべし!? オトナ婚活の必勝法は」は熟年婚活真っただ中にいる女の座談会。56歳、59歳、48歳、全員離婚経験あり。

 「気づけば50代半ば、このままトシを取るのも寂しい」「ひとり暮らしも悪くないなあと思うけれど、ふと『こんなときに誰かがいたら』」と、婚活を始めたのは経済的理由よりも「ひとりの寂しさ」が大きいと語っています。女性たちの主戦場は、結婚相談所、マッチングサイト、お見合いパーティーなど。「女性が並ぶなか、男性の視線が私をまたぐのがわかるのよ(笑)。その相手の視線の先にあるのは、明るいピンクのスーツを着た八千草薫っぽい雰囲気の女性」「わかる~。男はホント、八千草薫系が好きですよね」。石原さとみ、新垣結衣、深津絵里、永作博美、檀れいらの後ろに控える、ラスボス八千草。我々は永遠にふんわり美人の呪縛から逃れられないのです。

 そして経験者はこう語ります。「個性を消すこと」「ニコニコしてうなずく。あと、『えっ、ほんと?』『その話、聞かせてくださ~い』を多用する」「こちらから賢いことを言ってはダメ。『人間性を尊重』とか漢字が並ぶ言葉も控える」「メールには、『キャッ』という言葉を入れると、男性は食いつきはいいです(笑)」。マジですか。「キャッ」が「キヤツ」になってる未来しか想像できません……。

  男が放つ微表情を読み取ったり、男が喜ぶよう「キヤツ」……じゃなかった「キャッ」としちゃう女を演じたり。既視感があると思いきや、「まず、女性は30代から結婚の市場価値が落ちるという認識を持つことが重要」「会話の最初に『さ(さすがですね)し(知らなかったです)す(素敵ですね)せ(センスがいいですね)そ(それはすごいですね)」を入れる』」「『笑顔でうなずきながら相槌』を徹底」「声のトーンは『ミ』か『ファ』」と婚活術をアドバイスしていた「CLASSY.」(光文社)と一緒じゃないですか! 結婚って結局、何歳になっても女が同じような自縄自縛を味わわなければ達成されないものなのでしょうか……。

(西澤千央)

最終更新:2017/02/10 17:00
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