女子刑務所での受刑者の時給は10円! シャバに出ても役に立った作業とは?
覚せい剤の使用や密売などで逮捕起訴され、通算12年を塀の中で過ごした後、その経験を基にさまざまな活動を続ける中野瑠美さんが、女子刑務所の実態を語る「知られざる女子刑務所ライフ」シリーズ。
■刑務所での作業の時給は10円くらい
今回は「懲役」についてお話ししますね。懲役とは、「刑事施設に拘置して所定の作業を行わせる」(刑法第12条の2)ことです。この「所定の作業」にはいろいろあり、刑務所ではなく拘置所で作業をする場合もあります。
逮捕後に起訴されて、判決をもらうまで入っているのが「拘置所」で、判決が「懲役○年」と出ると「刑務所」に行きます。でも、判決の当日に刑務所に行くことはまずなくて、どこの刑務所に行くのか決まるまで何日かかかります。そして、法的には、拘置所にいても確定の日から「懲役囚」となります。
拘置所にいる間、つまり判決が確定していない「未決囚」の時は、私服を着て毎日面会や手紙書きができて、お菓子もお金があれば差し入れ屋から買えるのですが、刑が確定した途端に、拘置所でも「懲役囚」とされます。服は舎房着(いわゆる囚人服)で、いくらお金があっても、お菓子は買えません。面会と手紙も限られてしまいます。
そして、「所定の作業」が待っています。未決の時でも「請願作業」といって、本人が願い出ればできます。未決でも既決でも「賃金」ではなく、「作業賞与金」という雀の涙よりも少ないお金がもらえますが、「未決で作業やったはる人なんかおるの?」ってくらい見たことないですね。だって時給は10円くらいですよ。
そして、刑務所が決まると移管されます。だいたい「関西なら和歌山刑務所」とか、家の近くにしてもらえるのですが、遠方の刑務所に飛ばされることもあります。飛行機や列車での移動は、他のお客様には見られないようになっているのですが、キホン手錠に腰縄なので、ちょっと恥ずかしいです。ちなみに護送車は中から開けられないワンボックスやマイクロバスで、そんなにゴツいものではありません。
刑務所に着くと、手荷物の検査を受け、私服や腕時計、財布などはすべて預けさせられます(「領置」といいます)。持ち込んでいいのは、メガネや無地の下着など少しだけ。再審の準備をしている人は、裁判資料などを持ち込んだりできます。
そして、どの作業に就かせるかの「審査」を受けます。調理師の資格を持っているとか、適性や性格を審査して担当を決めるのです。刑務官にずらっと囲まれ、シャバにいた時のことや健康のことなどを聞かれます。で、その後に「これからは○○工場で作業してもらいます」と言い渡されます。