女子刑務所で人気のテレビ番組は「警察24時」! 塀の中のスケジュールは分刻み
覚せい剤の使用や密売などで逮捕起訴され、通算12年を塀の中で過ごした後、その経験を基にさまざまな活動を続ける中野瑠美さんが、女子刑務所の実態を語る「知られざる女子刑務所ライフ」シリーズ。
■おかずを分けてあげたら「懲罰」
今回は、ムショの一日についてお話しします。
ムショや拘置所は、施設によって細かい規則がかなり違っていて、同じ施設でも所長が変わると規則も変わったりします。法律(「刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律」)も、大まかなところを決めて、「あとは施設の長の判断で」みたいにしているのです。これは、それぞれの施設の大きさや設備が違うので、現場で判断していいということのようです。なので、同じ女子刑務所でも私が勤めた和歌山と栃木ではいろいろ違っていましたし、私がいた頃と現在はまた違っているかもしれません。
とはいえだいたいは同じですけどね。「どこのVIPやねん」というくらいの分刻みの毎日です。朝は、平日6時40分、休日7時40分時くらいの起床です。夏と冬で少し違うこともありますが、基本的に舎房には時計がないので(脱走防止のためらしいです)、時間は「何となくわかる」感じです。
起床の音楽が鳴ると、ソッコーで布団を上げて着替え、洗面、清掃を済ませ、朝の「点検」を受けます。ちなみにパジャマは塀の中にはまったく似つかわしくない可愛い布地のフリフリパジャマです(笑)。それ以外はずっと舎房着(いわゆる囚人服)を着ています。洗濯も懲役がします。洗濯工場はアイロンを使ったりするので、ケンカっ早い人とかは選ばれません。体力のいる作業なので体格のいい子が選ばれやすいです。
点検では、舎房の入り口前に正座して並び、刑務官が来るのを待ちます。刑務官に「○房!」と言われたら、座っている左端から順にあいさつします。刑務官からは名前ではなく「呼称番号」で呼ばれているので、各自が「呼称番号○番! おはようございます!」と声を出します。
朝食の時間は15分ほどで、ゆっくり食べられません。舎房で食べる施設と大食堂でみんなで食べる施設があります。メニューはごはんと味噌汁、つくだ煮、ふりかけなどの簡単なおかずです。自分が食べる分は自分だけで食べなくてはならず、誰かに分けたら「懲罰」の対象になります。「強い人」が食べ物を取り上げていた時代が続いたからのようです。
懲罰になったら、独居房に入れられて工場にも出られず、ひたすらじっとしていなくてはなりません。面会や手紙もダメですし、仮釈放の評価にも響きます。いわゆる模範囚は、罪を反省しているわけではなくて、こういうことを計算できる人です。私はできずに、おばあさん(今はムショも高齢化がめっちゃ進んでいます)におかずをあげたりして、たまに懲罰を受けていました。すぐ食べてくれればいいのに、やっぱりお年寄りは何かと動きが遅いのでバレてしまうんですよ。