「素人男子の台頭」「マッサージモノが人気」女性向けAVカルチャーの進化“4大トピック”
■topic2:ストーリー重視から“男の肉体”を愉しむように
女性向けAVでは、ストーリーが重視されるのが鉄板……と思っていたので、今年、「マッサージ」ジャンルが人気急上昇中、と聞いたときには意外だと感じました。男性は視覚的刺激で性的興奮が発動するのに対して、女性は関係性のなかで興奮を覚えるとはよくいわれることで、だからこそ映像のなかのセックスまでのプロセスを見せる必要があるとされてきたのです。
疲れをとるためのマッサージや美容目的のエステに行った女性が、いつの間にかエッチな施術を受けていた、という「マッサージ」は男性向けAVでは定番中の定番。この逆バージョン=マッサージに来たはずの男性が思いもかけない性的サービスに戸惑いながらも感じてしまう……しかも、マッサージする側の女性は着衣なので、見る側は男性の肉体、表情、反応にフォーカスせざるをえません。そんな作品がウケたのは、関係性というクッションを挟むことなく男性の肉体や性的反応をダイレクトに受け止められる女性が増えてきたという表れなのでしょう。
■topic3:AVの世界を飛び出したエロメン&イケメン
エロメン、イケメンといわれる「名前のある男たち」は、表現の場を拡大しています。2015年、エロメン&イケメンで構成される「劇団Rexy」が結成され、舞台演劇への挑戦がはじまりました。これまで3回の公演が開催されましたが、いずれも人気脚本家、演出家を迎えています。
有馬芳彦さんや渡部拓哉さんら、演技経験があるエロメン&イケメンはもちろんのこと、女性向けAVと出会わなければ舞台に上がることなど一生なかったはずの男性たちが、おそらくは厳しい稽古を経て、AVで見せる“裸の表現”とは別の演技に真っ向から挑んでいく様子を目の当たりにすると、ファンならずとも自然と応援したくなります。
また、女性向けアダルト電子コミックを配信する「e乙蜜コミックス」がエロメンをモデルにしたショートストーリーコミックスを配信。2次元化することで、エロメンの王子さま度、存在感のファンタジー度が増すため、よりライトな層がアプローチしやすくなっているようです。
舞台上で飛び散る汗まで見えるナマのエロメンか&イケメンか、現実を忘れさせてくれそうな2次元の彼らか。ユーザーの選択肢が広がっています。
■topic4:女性とAVの親和性を高めた「スマホでの視聴」
女性がAVを見ることが一般化し、ここまで見てきたように多様化が進んだ背景には、「スマホでの視聴」が定着したことがあります。シルクラボは起ち上げ当初、DVD作品をリリースしていました。それはユーザーの8割がいわゆる“ガラケー”を使用していたためと聞いています。加えて、男性では、すでに定着していた“パソコンでAVを見る”という習慣が女性には根付いていませんでした。その後、社会全体にスマホが普及したこともありますが、一徹さんがNOTTV(ノットティービー、NTTドコモによる携帯電話端末向けマルチメディア放送。現在はサービス終了)にレギュラー出演していたため、スマホに買い換えた女性も多かったといいます。いずれにしろ、DVDのパッケージを家族に見られたらどうしよう、など細かいストレスを感じることなく、よりプライベートな環境で視聴できるようになったことで、女性とAVの親和性が高まったことは間違いありません。
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視聴しやすくなり、人物や作品の幅も増え、女性向けAVが今後も発展を続けることは容易に想像できます。もちろん、男性向けのAVが好きという女性もいるでしょう。それでも時たま女性向けAVを見ると、そこに漂う空気に必ずやホッとするはずです。暴力的な描写がなく女性がていねいに扱われという安心感、そしてキラキラしている男優陣。女性向けAVには、これからも女性の性的好奇心におけるセーフティゾーンであってくれることを願います。
(三浦ゆえ)