映画『未来を花束にして』講演会で考えた、女性が活躍できない日本社会
国会議員秘書歴20年以上の神澤志万です。
秘書仲間にはいろいろな人がいて、帰国子女も多いです。「人材のグローバリゼーションが進んでいる」と言いたいところですが、実際の永田町は、全く違います。古臭い男尊女卑が横行し、セクハラやパワハラが横行しているのです。その上、自分の言動がセクハラだとまったく気づいていない議員も多いんですよね。
しかし、「紳士の国」とか「レディーファースト」のイメージが強く、女性の首相が2人も誕生しているイギリスでさえ、女性に男性と同等の参政権が与えられたのは、1928年のことだったそうです。イギリスも女性の地位が非常に低く、当時の女性の労働者の賃金は男性の2分の1から6分の1だった時代があったと知り、驚きました。
このイギリスにおける女性参政権運動をテーマにした映画『未来を花束にして』が、2017年1月に日本でも公開されるそうで、公開に先駆け、日本でも講演会が行われました。
■イギリスの国会でも、いまだにセクハラは存在する
この映画は、普通の女性たち(映画では“名もなき花”と表現されています)の日々の生活と参政権運動をリアルに描いており、運動を熱心にしていた女性たちが、決して「男勝り」ではなく、自分たちらしい服装と感性で働きながら子育てや家事をしていたごくごく普通の女性たちだったという部分が、とても印象に残ると思います。主演のメリル・ストリープは「すべての娘たちはこの歴史を知るべきであり、すべての息子たちはこの歴史を心に刻むべきである」というメッセージを出しています。
ストリープ演じる主人公、エメリン・パンクハーストのひ孫にあたるヘレン・パンクハーストさんが来日し、「政治分野における女性の参画と活躍を推進する議員連盟」の特別講師として議員会館で講演をされ、イギリスでの女性の社会進出の取り組みや効果的な手法などをお話ししてくださいました。
意外だったのは、イギリスの国会でも、いまだにセクハラは存在するということです。でも、国会がテレビ中継され、セクハラを受けた女性議員もその都度SNSにアップしたりするので、かなり減ってきたそうです。
そういえば日本でも、2014年の東京都議会の塩村文夏議員が受けた「結婚しろ」「自分が子どもを産め」というセクハラヤジの映像がネットに出回り、批判であふれたことから、ヤジを飛ばした男性議員がかなりの社会的制裁を受けたことがありましたよね。
でも、永田町では、こんな程度のセクハラなんて日常茶飯事です。日本の中心である永田町からセクハラがなくならない限り、女性が日本社会で活躍できないことは明白です。
■女性秘書も「愛人」と思われたい!?
パンクハーストさんのお話をお聞きして、「権利は勝ち取るもの」だと実感しました。永田町にずっといると、もはやセクハラにも感覚がマヒしてしまいがちなのですが、やはり怒っていかなければならないなあとも思います。
たとえば永田町では、おばさんになると女性扱いされません。これは一般企業や官庁も同じかもしれませんけどね。おばさんの前では、オッサンたちが平気で下ネタをしゃべります。年齢を重ねても女性であることは変わらないし、不快に思う気持ちも変わらないのにと憤りを感じることもしばしばです。
それに、男性議員と女性秘書は、事あるごとに愛人関係を疑われます。これには女性秘書のほうにも問題があることが多いです。デキてもいないのに「デキてる」と言われたら、普通は怒ると思うのですが、それを女性秘書自身が「愛人と疑われているうちは華よねー」なんて言うんです。自分を納得させるためなのか、間違った感覚を洗脳されているのかわかりませんが、そんなことを言わなくてもいいのにと思います。
「女性秘書=愛人」という考え方は、本当にどうにかしてほしいと思う日々。自他ともに認める「年増」になった神澤ですが、それでも「愛人」だと思われて仕事に支障の出ることがあります。それを愚痴ると、逆に「よかったね」などと言うのが永田町の感覚なんです。要するに「まだ女性として見られてよかったね」という皮肉なんでしょう。