おバカドラマ愛好家が熱狂、『カインとアベル』桐谷健太の“顔”と山田涼介のトンチキ
序盤は「茶髪の営業マン、ありえない!」など、正面から批判するマジレス記事が続出した月9『カインとアベル』(フジテレビ系)。
しかし、それがいかにバカバカしいことであったかは、12月5日放送分第8話を見た人には説明不要だと思う。ドラマは終盤に向かって、本来の月9視聴者とはまったく違う層である「おバカドラマ愛好家」たちの間で「いま、一番面白い」と言われているからだ。
正直、1~2話は重くタルい展開だった。しかし、「何をやってもダメだった」弟・優(Hey!Say!JUMP・山田涼介)がめきめきと頭角を現し、嫉妬にかられた兄・隆一(桐谷健太)が壊れ始めるところから物語は面白くなってくる。そして、優が取引で成功したことで取締役に就任し、兄弟の立場が逆転&優が悪い顔になってきた第7話終盤からは、かなり面白い。
優が取締役になるまでの展開のイージーさ、チープさなんて、ビジネスドラマではないのだから、どうだっていい。ただ、「月9」という枠のために「恋愛ドラマ」と思われてしまったのは惜しい。
今週の内容をざっくり紹介しよう。
弟への嫉妬にかられた兄が、ブツブツ言いながら、ネット通販でポチった盗聴器を社長室や弟の取締役室などさまざまな場所に仕掛け、盗聴の成果も上がらないうちに、数分で弟にバレる。防犯カメラに全部映っていたのだ。
そして、弟は苦悩の末に「会社の不利益になるものは排除する」という結論から、役員会議で副社長である兄の解任を要求する。失意のどん底にあった隆一は、梓(倉科カナ)との結婚式に姿を現さず、結婚式は中止に。
さらに、中止になった披露宴会場に1人やってきた隆一は、そこで視聴者の誰もが予想しえなかった、思いがけない顔をするのだが……。この顔がもう、最高。
この瞬間だけで、「これまで見続けてきて、本当に良かった」と嚙みしめてしまうほどの値千金の顔なのだ。しかし、これはここまで頑張って見続けた約8%の人だけが得られるボーナス的要素なので、詳細は伏せておこう。
余談だが、大手スポンサーが手を引いたためか、間に挟みこまれるようになった「プラレール」「トミカ」のCMがまた、場違いで、ズッコケ感をさらに高めてくれている。
それにしても、桐谷健太がこんなにも面白い役者とは、知らなかった。そして、あらためて感じたのは、山田涼介の「キラキラ+ブラック」のハマりぶりだ。山田ファンの中には「最初の頃の優しい優くんに戻って」と本気で嘆いている者も多数いるが、その一方で、実はブラックな役こそ山田によく似合う、という声もある。
山田の主演ドラマ『理想の息子』(日本テレビ系)では、何でもできて人望のある鈴木大地(山田)に嫉妬した友人・小林(Hey!Say!JUMP・中島裕翔)が、大地に化けて悪事を尽くすことで、悪評を広めようとする展開があったが、その「ブラック大地」に対するファンの盛り上がりはすごかった。
また、映画『グラスホッパー』で山田が演じた殺し屋の蝉も、非常に危うく美しかった。実は少し影のある「キラキラブラック」こそ、山田の最適な生かし方なのではないかと思う。そして、あらためて「トンチキ」もよく似合うことを再確認した。
山田といえば、NYCを兼任していた時代、『NHK紅白歌合戦』でピッチピチの羞恥パンチ姿で歌うときも、ヘンな犬のワルツ曲を歌うときも、常に全力のキレキレダンスを見せていたのが今でも忘れられない。実にシュールで素晴らしかった。
また、舞台『ジャニーズ・ワールド』でも、「13月を探す」などというトンチキ展開に、100%の熱量で真剣にのぞんでいた。美しく涙を流し、苦悩すればするほど、トンチキが輝く。
真面目に全力で美しくトンチキをすることにおいて、こんなにもハマる人は、ジャニーズ全体を見渡してもそうそういない。
そう思うと、ジャニー社長の管轄を離れ、藤島ジュリー景子副社長のマネジメントにかわって以降、グループとしては躍進したものの、「山田のキラキラトンチキ」が見られなくなってしまったのが、なんとも惜しまれる。
(田幸和歌子)