カルチャー
映画【ら】上映とシンポジウム「性暴力被害に対する第三者の向き合い方 報道やネットによる二次被害防止を考える」レポート

「性被害がまるでポルノ作品のように書かれている」性暴力を助長するネットや報道の問題点

2016/12/07 15:00

■メディアでは性被害がまるでポルノ作品のように描かれている

(左から)女性とアディクション研究会発起人の田中紀子さん、水井真希監督、ジャーナリストの安倍宏行さん、ジェンダー研究者の牧野雅子さん、弁護士の白木麗弥さん

 続いて、「性暴力被害に対する第三者の向き合い方 報道やネットによる二次被害防止を考える」シンポジウムへ。登壇者は、水井真希監督に加え、ジャーナリストの安倍宏行さん、ジェンダー研究者の牧野雅子さん、弁護士の白木麗弥さん、そして、女性とアディクション研究会発起人の田中紀子さん。

 最初に、性暴力事件が起こるたびに「なぜ必死で逃げなかったのか」などと、被害者を責めるような報道が執拗にされることに関する話題へ。水井監督は「格闘家であっても、後ろから羽交い締めにされて刃物を当てられたら逃げられない」と断言。水井監督は自身が被害に遭った際には、厚底靴を履いており、道も砂利道だったそう。どうすべきか考えた結果、これは自分の足で走っても逃げられないと思い、逃げるのをとどまり様子をうかがうことにしたという。

 生き延びるため一生懸命考えたにもかかわらず、女性自身も後から「あのときこうすればよかった」と思い返してしまうため、やはり自分が悪かったのかと思い詰めてしまう。そして、ますます被害に遭ったことへの声を上げられなくなってしまうのだと、田中さんが解説した。

 最近では慶応義塾大学や千葉大学の学生による集団女性暴行事件が大きく報道されたが、昨年、明治大学の学生が別の大学の女子学生を泥酔させ、集団で昏倒させた事件が起こった際には、道端に倒れた女子学生の姿が詳しく報道され、二次被害を思わせた。

「少なくとも80年代から性暴力事件の報道のされ方は問題視されてきて、かなり改善したとは思います。例えば、かつては性犯罪が『イタズラ』『乱暴』などと書かれることもありましたが、現在は「強姦」と書かれることが増えています。一方で、性暴力事件ががまるでポルノ作品のように書かれているケースが目につきます。そうした記事は読者に性暴力はポルノとして扱っていい題材なのだという「性暴力認識」まで一緒に届けてしまいます。報道に関わる人たちには、事件の扱い方によっては、被害者非難につながり、当事者が被害を語れなくなったり、問題にされるべき加害行為が問われず、性暴力を助長する恐れがあることを認識してほしいです」

 牧野さんは、性暴力問題の報道のされ方にそう難色を示した。しかし、性暴力事件における報道はマイナス面だけではないと、安倍さんは話す。「既存のメディア、特にテレビでは性暴力などの扱いづらい問題を報道しなくなっているので、今こそネット媒体で正しい報道をすべき」と述べた。

■どんな人でも被害に遭う可能性がある

 俳優・高畑裕太が暴行事件を起こして不起訴となった後、顧問弁護士がコメントを公表した件についても話は及んだ。弁護士である白木さんは「普通、発表しないもの。当事者がどうだったのかを改めて発表するのはどうかと思う」と、異例であることを指摘しつつ顔をしかめた。

 性暴力に関する対策は30年近く続いており、社会が変わるまでにあとどのくらい時間がかかるものなのかという質問に、「関心が集まっているのは今。今回のようなシンポジウムは大事」と安倍さん。白木さんは「どんな人でも被害に遭う可能性があります。最初に相談する人によって人生が変わるので、安心して被害を告白できる場所を作っていきたい」と締めくくった。

 性暴力事件の報道は一歩間違うと二次被害を招いてしまう。それを防ぐために、私たちメディアに携わる者としてはもちろんのこと、報道を受け取る側も、日頃から性暴力問題に関心を持って正しい知識を身につけるべきだと実感するイベントだった。また、性暴力の問題を、もっと身近な問題として考える必要もあるだろう。
(姫野ケイ)

<取材協力>
女性とアディクション研究会

最終更新:2016/12/07 15:00
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