カルチャー
映画【ら】上映とシンポジウム「性暴力被害に対する第三者の向き合い方 報道やネットによる二次被害防止を考える」レポート

「性被害がまるでポルノ作品のように書かれている」性暴力を助長するネットや報道の問題点

2016/12/07 15:00
水井真希監督

 2016年11月20日、「映画【ら】上映とシンポジウム 性暴力被害に対する第三者の向き合い方 報道やネットによる二次被害防止を考える」が、すみだ生涯学習センター ユートリヤにて開催された。主催者である「女性とアディクション研究会」は、薬物・アルコール依存症など、アディクション(嗜癖)の問題と女性に関して研究する団体。一見、性暴力とは関係ないようだが、性被害に遭ったことをきっかけに依存症に陥ってしまう女性もいるということで、今回のシンポジウムが実現した。

 このところ、立て続けに報道されている有名大学の学生による女性暴行事件。被害の内容が事細かに報道されるさまは、まるでポルノ作品のような印象を与えるほど。本来は非常にナイーブなものであるはずの性犯罪の報道における問題点をメインに、イベントの模様をレポートする。

■なぜ犯人をイケメンにしたのか?

小場賢さん

 初めに水井真希監督が自らの性被害を描いた映画【ら】の上映。主人公まゆかはアルバイトの帰り、男に手足や目、口をガムテープでふさがれて車に押し込められ、拉致される。男を逆上させないよう、まるで交渉するかのごとく慎重に接して、明け方に無事解放されるが、犯人の車の車種やナンバープレートを把握できなかったことを後悔。その後、犯人は次々に女性を襲い、残虐な暴行を繰り返していき、まゆかは「あのとき私が男のナンバープレートを見ていたら、さらなる被害者は出なかったのではないか」と、自分を追い詰めていく。

 ラストのシーンでは、映画のモデルとなった事件の犯人は現在服役中であるとの文言が表示され、その現実に思わず背筋がぞっとした。

 上映の後は、犯人役の俳優、小場賢さんと水井監督によるトークショー。演じるまでは、加害者だけでなく、被害者にも非があったと思っていたという小場さんだが、犯人役を演じるにあたって、性暴力に関する本を読んで勉強し、考えを改めたという。

 犯人役がイケメンの小場さんであることから、「なぜ、いかにもレイプをしそうな気持ち悪い見た目の男ではなく、イケメンをキャスティングしたのか?」という疑問をぶつけられることもあると水井監督。しかし、次のように反論した。

「私が被害に遭ったときの犯人も、外見は普通にそのあたりにいそうな男性でした。よく、『イケメンだから許される』と言われることもありますが、たとえイケメンでも犯罪は犯罪だと伝えたかったんです」

 また、「男の人同士で、『あの子ヤラせてくれそう』とか話すことがあると思うんですが、そんな話になったら『そういうことを言うのはよくないよ』と男性同士でスマートに言えるようになってほしいですね」と、水井監督。

 小場さんも「周りに流されないよう、自分の意見を言いたいですね。今回、勉強をして、女性への暴力をなくすための男性主体の活動『ホワイトリボンキャンペーン』などがあることも初めて知りました。性暴力に関する問題に無関心な人が多いので、まずは関心を持ってもらいたいです」と語った。

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