12月号なのに「クリスマス」のワードほぼナシ! 超現実主義「GINGER」女子像とは?
■恋愛に夢を見ない超現実主義
もう1つ気になったことは、「GINGER」には男の影が一切ないこと。普通、アラサー女性誌の12月号といえば、クリスマス一色のロマンティック浮かれモードな特集ばかりで、彼に買ってもらいたいおねだりアクセサリー企画のほか、プロポーズを期待してなのか、真冬なのにウェディング特集が多いのも特徴です。そうでなくても、自分へのご褒美として、クリスマス限定のコフレセット特集やスイーツ特集などが組まれたり、とにかく誌面が「キラキラ」「女子力全開!」な作りになっているもの。
しかし、「GINGER」姐さんときたら、クリスマスという単語が出てきたのはウェッジウッドと女優の比嘉愛未(ナゼその組み合わせ……)のタイアップ記事「クリスマス・ティーパーティーへ、ようこそ。」、ニトリと脚本家・渡辺千穂(やっぱりナゼ……)のタイアップエッセイ「親友へのメリークリスマス」のみ。しかも、どちらも女友達とのホームパーティーの話で、『東京タラレバ娘』(講談社)の登場人物のようにグダグダと酒を飲みつるんでいるわけでもなく、キラキラ女子たちのようにシャンパン片手にリムジン女子会を開くでもなく、ノンアルコールのティーパーティーって!? さらに「私に贈るメリー・クリスマス」というアオリと共に紹介される自分用のプレゼントも、ブランドバッグやルブタンのハイヒールではなく、ウェッジ・ウッドのマグカップ(全柄セット)……。 堅実な「GINGER」女子たちはクリスマスだからって浮かれたり、心を乱されたりしないようです。
ちなみに誌面を通して登場した男性は、岩ちゃん(三代目J Soul Brothers・岩田剛典)のみ。おそらく、読者にとっては“愛でる対象”の男性なのでしょうが、それにしたって写真集の宣伝記事なわけで、潔いほど、恋愛に夢を見させない超現実主義な女性誌です。追い討ちをかけるように「今月のGINGERさん」として紹介されているのが、世界を股にかけてグローバルに働くシングルマザー……。確かに彼女の経歴や生き方は素晴らしいし、見習うべき部分もあるかもしれませんが、ちょっと極端すぎやしませんか!? 子どもや夫が登場しないことからも、独身アラサーがターゲットの雑誌であることは明白なんですが、「結婚」「恋愛」というワードはザッと見た限り見当たらず、ファッションページにかろうじて、「彼とのデート設定」のコーディネート写真が1枚だけ発見できました。ちなみに「モテ」というワードについては「モテライナーリキッド」の広告記事のみ!!
レギュラーエッセイ陣は、山田詠美と田中みな実という色恋沙汰を語らせるのにピッタリな2人にもかかわらず、それぞれ「岩井志麻子のヒョウ柄の話」と「一人でゴキブリを倒した話」をしていて……ねぇ! もっと話すことあったよね? 一体編集部はどんな依頼しているのか気になるばかりです。それとも、それが「GINGER」の正解なんでしょうか。
今のアラサー世代といえば、物心ついた頃から日本はずっと不景気で、世間を揺るがす事件や震災をリアルタイムで経験してきた世代です。もしかすると、超現実主義なのはそのせいもあるのかもしれませんが、もっと夢を見させてくれないと、ちっともスパークできないと思うのは私だけでしょうか。
(橘まり子)