「私の“ご主人様”は私だった」神田つばきがSM、AV、性の冒険の果てに見つけたもの
専業主婦だった38歳で子宮頸がんを罹患し子宮を全摘出。それをきっかけに離婚し、SMモデル、フリーライター、AV女優として活動し、さらにAV制作メーカー設立、ドラマものAVの脚本まで手がける神田つばき氏。
祖母と母に性欲を抑圧された過去、また離婚後、欲望の赴くままに性の世界を探求した彼女の歴史を綴った『ゲスママ』(コアマガジン)が刊行された。それを記念して、著者の神田つばき氏、社会学者の宮台真司氏、漫画家の田房永子氏、司会進行にライターの赤谷まりえ氏を迎えたトークイベント『ゲスママNight!』がロフト9渋谷にて開催された。性を軸に風俗、母子関係など縦横無尽に話は展開。その中で、特に性と母子関係にフォーカスした部分を紹介する。
■自分は何者かを知りたかった
宮台氏が遅れて会場入りするまで、まず女性3人のトークから始まった。今回の『ゲスママ』は、当初コアマガジンから「子育て本を書きませんか」と提案された。しかし「いつかは自分の性の冒険について書かなくてはと思っていた」という神田氏は、何を求めて性を仕事にしたのかを自分の娘に説明するために、半生記ともいえる本の執筆に着手したという。
「これまで、子どもたちは悩んだと思うんです。うちのお母さんはちょっと変なんじゃないかと。私の傷だらけの体を見ても、家族だからこそ怖くて、すぐには聞けなかったそうなんです」(神田氏)
そしてタイトルの『ゲスママ』は、性の仕事をしているから「ゲス」なのではないと強調する。
「お母さんが子どもを育てるために、風俗やAVでお金を稼ぐのはゲスではありません。私はプライベートでも自分の変態性欲を満たしてきた。それは『自分は何者か』を知りたかったから。私はその欲を満たすために、他人の体を利用していたわけです。私と関わった男性たちは、嫌な思いをしたり傷ついたりしたと思う。『何のために俺と付き合っているのか』と」(神田氏)
■親のコントロールに復讐する
その後、宮台氏が登場し、テレクラ、出会い系、援助交際の社会的な流れから、ナンパ師と母子関係の話に。宮台氏によると、ナンパ師には、女性をコントロールしたがる身体的な「フェチ系」と、寝取られなど関係性で興奮する「ダイヴ系」とに分類されるという。
「あくまで傾向ですが、母親が息子を強くコントロールするとフェチ系に育ちます。一方で、息子の感情に寄りそう母親に育てられた息子はダイヴ系になります」(宮台氏)
フェチ系の男性は、母親にコントロールされていた過去ゆえに女性に復讐したがるのだという。「潮を吹かせたい」「緊縛したい」など自分のビジョンがまずあり、ビジョン通りに女性をコントロールすることに快楽を覚える。だから、いわゆる鬼畜が多い。
ダイヴ系の男性は、相手の心に映るものを自分の心に映そうとする。相手の欲情を自分の欲情として体験して興奮する。その意味で、女性と一体化して溶け合う=フュージョンすることに、快楽を覚えるのだという。女性が望まないかぎり鬼畜になれないタイプだ。
「一方、女性にもフェチ系に相当するタイプがいて、罪を犯すことで興奮します。男性に似て親にコントロールされてきたケースが多く、親への復讐として、親が知ったら卒倒するような罪を犯したがる。罪深い存在になるためにフェチ系になります」(宮台氏)
自身も罪の意識にとらわれるという神田氏は、むしろそれが創作活動につながり、豊かな人生の起伏を作ってくれたと感謝しているという。宮台氏も、罪の意識を性の享楽を味わうためのリソースとして捉え直せると述べた。