貯金も保険もない「おひとり様」になるつもり? 病気や不安を軽くする「入るべき保険」とは
将来起きうるかもしれない病気や死に対する防衛策のひとつである“保険”。大雑把に言えば、一定の保険料を毎月支払うことで、万が一の時には支払った総額にかかわらず、その保険がカバーする内容に応じた金額が受け取れるという仕組みである。
人生のリスクヘッジには持ってこいだが、実際のところ医療保険と生命保険だけみてもその数も種類もさまざま。さらに、最近は女性向けの保険商品も幅広く、もはやどれに加入していいのか決めきれないという人も多いのではなかろうか。そこで、ファイナンシャルプランナー(FP)の梅田雅美さんに、保険にまつわる疑問をぶつけてみた。
■医療保険は絶対に入っておくべき
――日本は健康保険や年金制度が充実しているので、とくに独身で子どもがいない 会社勤めの女性の場合、個人で保険に加入する必要性をあまり感じないのではと思うのですが、率直に言って保険は必要ですか?
梅田雅美さん(以下、梅田) はい、必要です。現在、日本人は健康保険などの 社会保障制度で守られており、とても恵まれています。また、年齢や所得に応じて、医療費の自己負担額が著しく高額になった時に支給される「高額療養費制度」もあるので、医療保険に入らなくても大丈夫という人もいます。
しかし、これから少子高齢化が進んだら、今と同じ医療給付が未来永劫続くとは限りません。そもそも健康保険制度も年金制度も、社会の状況でいかようにも変わるものなのです。
――つまり医療費の自己負担が高額になるという可能性もあるのでしょうか?
梅田 もし、健康保険の財源が減って支出が増えれば、当然内容の見直しを迫られます。医療給付の内容を減らす方向にいく可能性も十分あります。そうなったら、私たちは自助努力で保障を補てんしなくてはいけません。
ちなみに現在、年末調整の際に対象の保険に加入した人に対して、課税所得を減らす「生命保険料控除」がありますね。つまりは、「自分で医療保険に加入すれば、できるだけ税負担を減らすから、自助努力でなんとかできるように頑張って」というメッセージです。ですから、将来のことを考えて医療保険は絶対に入っておくべきでしょう。
■看板商品はとりあえずお得!
――そもそも「医療保険」とは、どのようなものなのでしょうか?
梅田 医療保険のベースは、「入院と手術にかかる費用の保障」です。さらに、オプションとして「先進医療」を付けるのが最近は一般的です。先進医療とは厚生労働省が定める「高度な医療技術を用いた治療」のことで、技術料が健康保険の対象となりません。健康保険適用外の医療で、高額になることが多いのです。たとえば、がんの重粒子線治療では、トータルで200万円から300万円かかると言われています。また、先進医療は、よく「がんの治療」と思っている方も多いようですが、厚生労働省のホームページを見ると、先進医療が対象とする病気の項目はざっと100種類以上で、がんだけではなく日々更新されています。
もし病気になった時、どんなことをしても治したいと思っても、やはりお金がないと高額な治療は受けられないわけです。そういう意味では残念ながら、日本には健康保険制度があるにもかかわらず、貧富の差で受けられる医療のレベルが違ってくるのです。経済的に厳しいと高額な治療を諦めざるを得ない。そんな時に頼りになるのが、医療保険だと思います。
――最近、よくCMなどで耳にするのが、「がんになったら一時金が支払われる」という医療保険ですが、これはどのようなものなのでしょうか?
梅田 入院や手術とは別に、がん(上皮内又は悪性新生物)と診断されたら一時金が受け取れ、その後条件を満たせば複数回受け取れるというものがほとんどです。最近はがんが見つかっても、すぐに入院や手術が必要ではなく、通院で抗がん剤治療などを行い、がんを小さくしてから次の治療方法を判断するというケースが増えています。医療が進んだことで、がんと付き合いながら生活できるよう変わってきていますので、逆に入院と手術でしか、保険金が支払われないという医療保険だと不十分かと思います。
――ちなみに、医療保険はどれくらいの保険金額が受け取れるものが良いのでしょうか?
梅田 入院給付が5000円~10,000円で、先進医療は2,000万円くらいが妥当だと思います。貯金があれば加入しないという人は、老後やその他生活資金とは別に500万円以上の医療用貯金があるなら加入しなくてもいいとも言えますね。ただ、長生きする“リスク”が予想される昨今、極力貯金は老後のために残しておいた方がいいと思います。
――ただ、新しい保険商品も続々と販売されるので、どれを選んだらいいのか迷ってしまいます。
梅田 まずは、自分のライフスタイルを考えたうえで、保険のプロに良いアドバイスを受けて選びましょう。ただし、アドバイザーでも、新人の方や転職して間もない方など、必ずしも豊富な知識がある方とは限りません。有益な情報をたくさん聞き出すためには、できればFPの資格を持っている方や、店長などで経験のある方を指名するといいでしょう。
また、各保険会社の“看板商品”、つまり保険会社が開発に力を入れた自信のある商品はお得なので、探すといいかもしれません。そういう商品は単体で購入することが可能で、別の保険商品と組み合わせて自分に合ったセットを作ることができます。保険料を抑えて保障内容もアップする一石二鳥のお得ワザですね。