「私のセックスを想像されたくない」性愛を嫌悪する人に思い出してほしい“自覚”
家族関係、恋愛、夫婦関係、仕事、結婚、介護、人生……サイ女読者のお悩みに“プウ美ねえさん”こと熊田プウ助が、いつもそばに置いておきたい“エプロンメモ”とともに回答します。
【今回のお悩み】
「性別とか性愛とかが存在しない抽象的な何かになりたい」
はじめまして、こんにちは。私の相談は、彼氏がいてもセフレがいても、私自身が誰かと付き合ったりセックスしたりしてると、知人に連想させるのが死ぬ程嫌だと思ってしまうことです。
2ヶ月前に、長く付き合った彼氏と別れて、今はその後に知り合ったセフレとたまにセックスしているのみです。今は恋人とかよりも自分の仕事に集中したいとは思っていますが、セフレが恥ずかしいというよりは、真剣に付き合ってる彼氏がいた時も、近所の人に見られるのが嫌で家にも呼びたくないし、職場に迎えに来られるのも嫌でした。極論を言えば、性別とか性愛とかが存在しない抽象的な何かとして社会に存在したいと思ってしまいます。
でも、相手に我慢を強いているのも承知です。いい落とし所や発想の転換など、本当にどうしたらいいか教えてください……。(づーこ、26歳)
【プウ美ねえさんの回答】
1、2回会った相手はセフレと呼ばないでしょうし、2ヶ月間で数回では「フレンド」として恒常的に会う確信にいたらないはず……。なさったのは10回から20回でしょうか。とまれ、彼氏と別れて、2ヶ月ですでにセフレがいて、そのことを知人にけどられたくない、自分から発するセックスの匂いを感じ取られたくない、というお悩みですね。
かんたんです。周囲を観察して「あの人は性欲がなさそう」という人がいたら、その身なりや言動をまねてごらんなさい。セフレにたいしては「ホテルで会ってホテルで別れて」と言いましょう。あと「自分のセックスを想像されたくない」などとインターネットに投稿しないことです。それはかえって興味をそそる態度です。おねえさんは、顔も知らない女性のセックス頻度を、冒頭からたっぷり想像させられました。ホモなのに。とんだ時間の浪費です。
なぜ多くの人はセックスの話題を嫌悪し、隠すのでしょう。おいしい食事や、すてきな服をSNSで自慢する人はいるのに、「よいセックスをしました」という投稿や動画は多くありません。ほんとうにケチだとおもいます。おねえさんは「無駄な争いをふせぐ」ことが理由ではないかと睨んでいます。セックスは、自分の遺伝子をほかの良い遺伝子と結びつかせるための戦いです。美女やイケメンの性行為を目にすれば、劣情とともに劣等感をも刺激され、ときには憎しみも生まれます。金や持ち物ではない、肉体の優劣を直接感じさせられるからです。ぎゃくに、遺伝子を交わらせたくない不細工の性行為は本能的に見ることを避けるでしょう。おねえさんが出たAVは売れなかったし、たまにエロツイートをするとフォロワーがごっそり減ります。そこで、人間の大多数を占める非イケメンや非美女は、ながい歴史の中で性のタブーや、一夫一妻制などを考えついたのではないかと想像しています。
【今月のエプロンメモ】
むかし松田聖子さんが神田正輝さんとの新婚旅行から帰ったとき、記者の質問に対して清々しく「デキてるといいですね~」と答えました。「下品なことをいう娘だ」と評する向きもありましたが、そのひとたちは神田沙也加さんを下品呼ばわりしたことになります。性愛を軽蔑することは、いま生きている全人類を侮辱することです(体外受精で生まれたかたをのぞく)。人は全員、自分が性愛の末に生まれたことを自覚して、セックスを見せたり匂わせたりして、おおらかに、ゆるしあって生きるべきだとおもいます。そのうえで、見たい見たくないを取捨選択するのが健全なちんぽもとい進歩ではないでしょうか。
熊田プウ助(くまだ・ぷうすけ)
1969年生まれ、ゲイ漫画家。都内でひっそりと飼い猫と暮らす日々を描いたエッセイマンガ『本日もおひとりホモ。中年マンガ家生活』(ぶんか社)、『世界一周ホモのたび 狂』(同)など。最新刊は『TOKYO中年駄ホモ生活』(同)。
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