元「シブがき隊」本木雅弘に思う、「NYC」「Mr.King」が継承した3人組トンチキの系譜
映画『永い言い訳』の宣伝で、久しぶりにテレビへの露出度を高めている本木雅弘。
10月8日放送の『サワコの朝』(TBS系)では「シブがき隊」の解散理由について「自分の暴走」、11日放送の『火曜サプライズ 豪華芸能人が大集合&世界の豪邸大連発!秋の超特大4時間SP』では、「私からとっちらかったことを言って、私から解散を言い出した」と語るなど、今まで触れられなかった過去に言及する場面が見られた。
ところで、そもそも若い人には彼がかつてジャニーズにいたこと自体知らない人もいるだろう。また、薬丸裕英、布川敏和と組んでいた「シブがき隊」が、もともとジャニーさんセレクトでなく、TBSドラマ『2年B組仙八先生』に出演していた3人で構成されたこと、前身のグループ名「シブがきトリオ」が一般公募であったことなどは意外と知られていないのではないだろうか。
それでいて面白いのは、シブがき隊がジャニーズの歴代グループの中でも、相当「ジャニーズ」色が強いグループだったということだ。
NHK『みんなのうた』にもなったコミックソング「スシ食いねェ!」のイメージが強すぎるためか、世間にはおそらく完全にジャニーズの“イロモノ路線”として記憶されているシブがき隊。だが、途中までは王道も王道、楽曲も田原俊彦テイストと近藤真彦テイストを混ぜ合わせたようなものが多かったし、かなりトンチキな曲も多いが、決して笑わせるつもりではなく、本気で歌い、踊っていた。
ひょっとしたら、当の本人たちは「マジかよ……」と思っていた可能性もあるが、少なくとも事務所としては「トンチキ」や「ウケ狙い」のつもりなんか、まったくなかったはずだ。
シブがき隊は、初期の衣装は短パン多め、信号機の色分けあり、ギラギラ装飾ありと、ジャニーズ色全開(もちろんウケ狙いではない)だった。メンバー構成も「ヤンチャ枠(薬丸)+おっとり美少年枠(本木)+一重瞼のお笑い枠(布川)」と、完璧である。「他人の手垢のついたものを嫌う」とよく言われるジャニーさんが、皮肉にも他者が作ったものに入れ込んだのは興味深い。
そして、「3人組に羞恥プレイのような信号機カラーの衣装でトンチキソングを歌わせる」という、完全にジャニーさん個人の趣味世界と思われるドS行為は、シブがき隊を失った後、長い時を経て山田涼介、知念侑李、中山優馬の3人からなるユニット「NYC」にうっすら引き継がれた。
そして、闇深い「派閥問題」で管轄が分かれたことにより、NYCが自然消滅した後には、一時期はSexy Zoneの年上3人組(佐藤勝利、中島健人、菊池風磨)に、そして今はまだCDデビューもしていないJr.ユニット「Mr.King」にその影を追い求めているように見える。
ただし、Mr.Kingの場合はまだデビューしていないこともあり、嵐やHey!Say!JUMPの衣装のおさがりを着ることも多いため、羞恥プレイ衣装は比較的少ないし、与えられるユニット曲にもトンチキ感はない。また、シブがき隊、NYCなどと大きく異なるのは、CDデビューする前から「私物」のようにジャニーズ舞台とテレビ朝日のイベントに駆り出され(仕舞い込まれ?)、テレビには『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)や『ザ少年倶楽部』(BSプレミアム)など、特定の番組にしか出演しないこと。
さらに、シブがき隊やNYCのように、タイプ違いを3人揃えるのではなく、顔の系統の似通った「大好物」ばかりをギュッと集めていること。これは、「自分だけの小さな国に好きなものだけを集めて静かに暮らすようになった」とでもいうような、加齢による平和な気持ちへのシフトなのか、それとも「この際、野菜とかご飯とかいらない、肉だけでいい! バランスとか関係ない!」といった欲望の高まりによるものなのか。
ジャニーズ事務所の弱体化が囁かれるいま、退所後に自分の道を切り開いていったモックン(本木雅弘)の活躍ぶりを見ながら(退所後も俳優として評価される一方で、実はフジ系ドラマ『最高の片想い』『水曜日の情事』など、結構トンチキ作にも出演しているわけだが)、勝手にいろいろ考えさせられてしまうのだった。
(田幸和歌子)