[女性誌速攻レビュー]「婦人公論」10月25日号

「婦人公論」読者の不倫への言い訳にも防止策にもなる、「女がセックスしがたるなんて」という自縛

2016/10/17 20:40

 こちらの読者は、50歳会社員の女性。結婚20年になる夫と、大学生の息子がおり、経済的な余裕もあって「人からは幸せに見えるだろう。けれど、私は40歳の頃からずっと不倫をしている。それも1人の男性とではない。47歳までの7年間で、100人近い男性と会い、20人とセックスした」というツワモノ。結婚前に付き合った男性は2人だけ、初体験も20歳を過ぎてからという奥手女性が、セックスレスから出会い系サイトにアクセス。良さそうな人を見つけて逢瀬を重ね、いざセックス。「セックスの力は大きい。特に性から遠ざかっていた女性は、スキンシップにとても弱いのだ。(中略)恋愛だと錯覚し、2人の関係について深刻に悩む。私もそんな典型的な女だった」。

 結局この男性は名前も住所もデタラメ、いろいろな女に手を出していることがわかり幻滅。しかし「別れるには、ほかの誰かが必要だ。もっと愛してくれる誰かが」と次が見つかるまでキープする周到さ。ようやく見つけた好青年は「セックスは好青年の印象とはまるで違った。自分勝手で雑。(中略)思いやりも心もないセックスは、疲労感と痛みしか残らなかった」。それから前述の通り多くの男たちとセックスする日々。しかし相性のいい男を見つけても「得られるのは快楽だけ。食事もせずホテルに直行し、終われば帰る」とそれも満足できない。「私が求めているのは、不倫をずっと続けることではない。いつか夫と離婚して好きな人と再婚したいと夢見てしまう」。

 結婚という枠組みに疲れて不倫に走り、不倫に疲れてまた結婚という枠組みに向かう。心と体の両方を満たしてくれる誰かがいるはずと、不毛な闘いを続ける女たち。「女がセックスしたがるなんて」という心の壁は、平穏な生活を守るには必要悪なのかもしれません。その壁を破った時、快楽と引き換えに欲望というとんでもない魔物と闘わなければなりませんから。
(西澤千央)

最終更新:2016/10/17 20:40
婦人公論 2016年 10/25 号 [雑誌]
ぬくもりだけほしいって、人間の根源的な欲求だと思うけどなー