紀香は養子縁組でイメージアップ!? 酒井順子がつづるニュースなエッセイ『朝からスキャンダル』
今年は、正月早々、ベッキーとゲスの極み乙女。の川谷絵音の不倫スキャンダル発覚で、大騒動が巻き起こった日本。その後、乙武洋匡、米米CLUB・石井竜也、ファンキー加藤、桂文枝、最近では中村橋之助(現・芝翫)など、次々と不倫が発覚し、いやー、芸能人って、やっぱり人気商売なだけにモテモテで、不倫している人が多いんですねぇー、なんてあらためて思ってしまった。
『朝からスキャンダル』(講談社)は、“負け犬の遠吠え”の生みの親・酒井順子氏が、「週刊現代」(同)の連載で、2015年7月から16年7月にかけて、旬のスキャンダルネタやニュースについて、たっぷりのユーモアと毒をもってつづった、全45編のエッセイ。
もちろん、気になる不倫についての見解も書かれており、不倫がどうして、こうも人の関心を引き寄せてしまうのか、ということの理由は次のように分析されている。
「『一人の相手にだけずっと操を立て続けるなど、無理』という事実を皆が認識していながら、いざ不倫発覚となると騒がれるのは、『面白いから』でしょう。
刑法を犯しているわけではないが道義的にどうなのか、という行為が不倫。だからこそ我々は『自分が裁く』という気分に浸ることができるのではないか」
“他人の不幸は蜜の味”とはよく言ったもので、意外な人が不倫するほど、面白い。酒井さんが注目したのは、「女性セブン」(小学館)がスクープした、アッキーこと、安倍首相の夫人・昭恵さんが会員制バーに布袋寅泰を呼びつけ、首筋にキスしたという騒動。
首相夫人といえば、「一歩下がって夫を支える」という人が圧倒的に多い中で、“ここに来てやってくれた”と世間を驚かせた。さらに、エッセイの中では、1962年生まれの53歳である、昭恵さんの革新的な行動について語ったかと思うと、“同世代”であるハズの『サザエさん』のフネ世代における夜の営み、さらには、ハゲは絶倫、波平はその一例だったのかもしれない……と、話はどんどん飛躍していく。
また、不倫ネタではないが、本書の中で“さすが酒井さん”と思わせてくれた内容が、藤原紀香と片岡愛之助の結婚について。正直なところ、結婚はさほど興味のない女性もいるかもしれないが、歌舞伎の世界に飛び込み、「赤ちゃんどうするんだろう?」ということについては、気になっている人も多いのではないだろうか。
記者会見で紀香は、「女なので、産みたい気持ちはある」という趣旨の告白をしていた。とはいえ、44歳という年齢は、外見がどれだけ美しくても、なかなか微妙なお年頃。
そこで、考えられるのが養子縁組。酒井さんは、もしも紀香が出産できなかったとしたら、何かしらの事情で生みの親が育てることのできない子どもを小さいうちに養子として、実子のように育てることを望むのではないか、と推測。そうなったら、特別養子縁組の制度がうんと広まるのではないか、と期待を寄せるのだ。愛之助自身も養子であるが、これだけ有名なふたりが引き取った子どもが歌舞伎役者になったならば、そんな画期的なことはない。
出産が難しくなってきた年代の独身女性からは、一度は養子のことを考えたことがある、という声もちらほら耳にする。けれど、どうやらさまざまなハードルが高いようで、海外セレブたちのように、堂々と育てている人に出会ったことはない。
歌舞伎の世界では世継ぎの問題がある以上、いつかは何かしらのアクションを起こすはず。44歳で“おめでた”ならば、働く女性にとって、かなりおめでたいビッグニュースであるし、特別養子縁組をするにしても、それはそれで日本の歴史上、かなり斬新な試みで、養子のイメージアップにとても貢献する。どちらにしても、目が離せない!
このほかにも、澤穂希さんの結婚をきっかけに書いた「女子選手の婿探し」、「フジテレビの中年感」「少女監禁と源氏物語」「あなたの隣のトランプ」「不倫の地味化」など、気になるテーマが並び、そういえば、あの時、そんなニュースもあったな、なんてちょっと懐かしみながら、さらりと読める1冊だ。
(上浦未来)