コラム
仁科友里の「女のためのテレビ深読み週報」

テリー伊藤の“股間至上主義”的思考が漏れ出た、高畑裕太と坂口杏里への持論

2016/09/15 21:00

 女性の合意を得ることを重要視しないのは、ヒロミも一緒である。『バイキング』に出演したヒロミは「こういうことは誰の身にも起こりうること」とコメントし、「事件に発展しないよう、きちんと合意を取る、取れなければやめる」という話を、「おかしなオンナに関わると身の破滅につながる」という話にすり替えているように感じる。

 そして、『サンデー・ジャポン』に出演したテリー伊藤は、高畑が所属事務所を解雇されたことを受け「芸能界復帰をさせてはいけない」とし、その理由を「性犯罪者に対する世間の目は厳しいものがあるから」と発言した。正論だが、私にはこの発言には「性犯罪なんて大したことがないと思うけど」という前置きが省略されているように思えてしまった。なぜそう思うかと言うと、テリーも堀江、ヒロミ同様にすり替えを行っているからである。

 同番組で、坂口杏里のAVデビューを取り上げた際、ホストクラブで借金を作ってしまうと、ホストがAVや風俗を勧めてくることや、メンタルが不安定ならば心療内科を受診すべきというふうに話が展開していった。坂口のAV転身が、やむにやまれないものであることをほのめかしていると思われるが、テリーはその流れに加わらない。その代わり「ビデオを見て、彼女が本当に感じているのかがポイント」「のめりこんでいたら、結構いいと思う」「(見ることで)応援してあげたい」とコメントした。

 坂口のAVを見たことで何がわかるのか、どうやって坂口が本当に感じているのかを判断するのかについては述べていないが、これって、単に自分が見たいだけなのを、御託をつけてごまかしているだけではないだろうか。念のため申し添えるが、AVを見たいと思うことに文句を言っているのではない。相手を思いやっているかのような発言に見せかけ、己の股間の欲求を正当化しようと、話をすり替えていることが不快なのだ。

 女性を、隙あらば己の性欲のはけ口にしようとする男性は存在する。そういった考えを、躊躇なく公共の電波に乗せて発言するテリーが、私には、女性や性犯罪を「その程度」のものと思っているように感じられる。

 性欲が“悪”なのではなく、「合意なく」性欲を解消しようとすることがいけないのだと言っても理解できない人はいる。それは、股間の欲求を“正義”とする人であり、「正義を邪魔する人はみんな“敵”」「“敵”ならば倒してもよい」という考え方をするのである。性犯罪は厳罰化される方向に向かっていて、明治時代以来の改正となるそうである。明治の常識で現代を裁いていたことに驚くが、テレビにはびこる股間至上主義者を見ると、思ったほどの抑止力があるとは到底思えない。

仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ、フリーライター。2006年、自身のOL体験を元にしたエッセイ『もさ子の女たるもの』(宙出版)でデビュー。現在は、芸能人にまつわるコラムを週刊誌などで執筆中。気になるタレントは小島慶子。著書に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)、最新刊は『確実にモテる 世界一シンプルなホメる技術』(アスペクト)。
ブログ「もさ子の女たるもの

最終更新:2016/09/15 21:00
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