ラブホテルで幽霊よりもコワいものとは? 殺人、自殺……映画以上の事件が現実に
ラブホテルの清掃員をしている大塚が体験した&同僚から聞いたコワーいラブホ怪談をご紹介します。
【第10話(最終回) 一番コワいのは……】
先月、新しく当ホテルに入ってきたイトウさんはこの道ン十年の大先輩です。歌舞伎町や鶯谷ほどではないですが、そこそこの激戦区にお勤めだったそうです。まあこの業界は従業員のメンツも流動的で(「定着率が悪い」ともいいますが)、いろんなホテルを渡り歩く人は珍しくありません。
で、この道の大ベテランでも「新人さん」たちは、自己紹介とともに「自分がいた○○には超イジワルなオバハンがいて、気に入らないヤツを辞めさせている」とか「□□には幽霊が出る」とか、そんなお話をすることが多いです。イトウさんの場合、「前の勤務先の近くのホテル」に「強烈な幽霊が出る」とのことでした。
「建物自体は小ぎれいだから、AVの撮影なんかでも使ってたんだけど、カメラが壊れたり、女優さんが怖がって泣いたりするんだって。というのも、実は人殺しがあった『超有名物件』だったわけ。毎日前を通ってたから、気味が悪くてね」
イトウさんは(わりと)良識ある行動をとりそうな感じでしたが、「こういうのはニガテ」なのだそうで……。で、どうしようかと思っていた時に、お世話になった支配人さんが退職したので、同じタイミングでご自分も辞めたのだそうです。
店名を聞いてググったら、まだありました。殺人事件は1988年ですが、91年には自殺者も出ているネットでは有名なホテルでした。霊っぽいのが映ってる動画もあります。
「幽霊もコワいんだけど、圧倒的に人間の方がコワいでしょ。なんでラブホでわざわざ殺したり、自殺するかなと思って」とイトウさん。
「そうやなあ。そういえば、京都でもベッドの下に死体があった事件があったわ」と関西出身のタカノさんが言い出しました。
「けっこう前やけど、『何かくっさいなあ』とみんなが思っとったら、マットの下にパンツ一枚の女性の死体があったんやて」
「気づきましょうよー!」
みんなが言うと、「いやオレはそこで働いてへんし。マットがヘンな形になっとんのに、何日もその上でお客さんがな……」とタカノさん。うーん。気づかないもんなんですかねえ。
一同、「ほんと、幽霊より人間の方がコワいね」という結論になりました。ちなみに、タランティーノ製作総指揮の映画『フォー・ルームス』に同じ設定がありますね。ホテルに家族と泊まっていた女の子が、お部屋で弟くんに「アンタの足がくさい」とずっと言ってるんですが、実はご遺体がベッドの下にあったという。
検索したら映画は95年で、京都の事件は97年に起こっています。こちらのホテルはもうないようでした。
南無阿弥陀仏
ラブホラーは今回で終了です。お読みいただきありがとうございました。R-ZONEでは、引き続きラブホで起こるちょっと笑えるお話を連載していますので、こちらもよろしくお願いします。
大塚(おおつか)
都内某所のラブホで働く現役清掃員。R-ZONEと月刊誌「週刊実話ザ・タブー」(日本ジャーナル出版)で清掃員の日常を連載中。