「なぜ不倫をしないのか?」上野千鶴子が指摘する、“理想の結婚”がはらむ矛盾点
■上野千鶴子の本は「古くさく」なるべき
最後に上野さんは、自身が「結婚」という道を選ばなかった理由について、「私は、自分の性的な自由や感情の動きに契約で鎖を付けたくないから、結婚という道を選びませんでした。だけど、それには代償があるんです。結婚をしていないと一人前に見られないとか、規格外にさせられるとか、差別されるとか。子どもを産まない女は一生誰からも信用されません。そのくらいの覚悟はしておいた方がいいですよ。でも代償に見合うものは得たと思っています」と発言。しかし、それは非婚という生き方だけの話ではなく、「どんな道を選んでもメリットとデメリットがある」と言い、
「結婚をした方も、確保した地位や家族など得たものがありますよね。自分が得たものと、そのために支払ったものがある。その帳尻が合っていればいいんです。私の帳尻は黒字です。どちらにしたって、代償は支払わなければいけません。帳尻が合わなくなったらやめればいいんです、それだけのこと」
と、結婚を選んでも、非婚を選んでも、どんな人生だろうが、何らかの代償はある。結局は、自分が選んだ道への覚悟があるかどうかであると、結論づけていた。
「性愛の話題に対して抵抗感がない」女性たちが集まる場であったが、上野さんの“めった切り”なトークと会場の反応を見ていると、いまなお、女たちの体への意識は、古い価値観から抜け出せていないことがよくわかった。しかし、ある参加者が、『発情装置』について「内容が古くさい」と述べ、それに対し、上野さんが「それがこの本の正しい読み方です」と答えていたのが印象的だ。上野さんの意見をどう捉えていくか、それこそ、性愛や男女関係、結婚などの問題に囚われている女性が、そこから脱する1つの足がかりとなるかもしれない。
(取材・文=和久井香菜子)