生理前の頭痛はPMSではない!? 頭痛専門医が教える、「女と片頭痛」の意外な事実!
■精神的なストレスから頭痛になることも
――私自身片頭痛持ちで頭痛外来の存在は知っていたのですが、敷居を高く感じていました。
五十嵐 全国調査で片頭痛持ちの人の7割は、頭痛のために病院で受診したことが一度もないことがわかりました。寝れば治る、薬を飲めば治る、家族に頭痛持ちがいるから普通のことだと思ってしまう、というケースが多いですよね。どこを受診してよいかわからない、会社を休めない、ということもありますが。
――頭痛外来で診察はどのように進んでいくのでしょうか?
五十嵐 一番大事なことは、患者さんの話を聞くことですね。片頭痛か緊張型頭痛かはMRI検査でわかるものではありません。脳梗塞はMRIを撮れば診断がつきますし、高血圧は血圧を測れば、糖尿病も採血をすればわかります。しかし、片頭痛や緊張型頭痛などの一次性頭痛はあくまで患者さんのお話をよく聞かないと診断できません。
患者さんのお話を整理して、どの頭痛に当てはまるか確認し、そこで典型的な症状から外れていたり、患者さんから「今までと違う頭痛が起こった」「同じ頭痛だが頻度が増えた」とうかがえば、何かほかの因子がある可能性があるのでMRIなどで脳の検査をします。また、患者さん自身が「脳の病気ではないか」と心配で来院された場合、その「心配」自体が頭痛を悪化させるケースもありますので、MRIを撮り何も心配なものはないことを確認して安心していただくこともあります。
■市販薬を服用していいのは月10日まで!
――片頭痛、緊張型頭痛のどちらの患者さんが多いのでしょうか。
五十嵐 受診患者さんの中では断然片頭痛ですね。片頭痛の方は痛みが強くて吐いてしまうこともあり、仕事をキャンセルしたり、学校に行けなくなったりと生活に支障が出てしまうので来院される方が多いですね。一方、緊張型頭痛は、有病率は高いのですが患者さんがそれほど困っていません。一晩眠ったり、お風呂に入ったり、友達と楽しいことをしていると忘れてしまう。ただ、緊張型頭痛でもほぼ毎日頭が重苦しいという場合は「慢性緊張型頭痛」というのですが、そうなると生活に支障がでるので病院で受診されますね
――市販の鎮痛薬について、本書では「月10日以上飲むようなら専門医を受診した方がいい」と「市販の鎮痛薬は単一成分のものを選ぶ」とありました。
五十嵐 月に10日以上市販の鎮痛薬を飲んでいると、「薬剤の使用過多による頭痛」という状態になることがあります。「痛みが何回も起こっている」ということは、脳に侵害刺激という悪い刺激が何回も加わっている状態なんですね。そこに薬を使うと、脳の痛みに対する閾値がどんどん低くなってしまい、今まで痛いと思わなかった刺激でも痛く感じてしまうようになります。このような状態は鎮痛薬単一成分のものよりも、カフェインや鎮静作用のある薬剤など、鎮痛薬以外の成分も含まれている薬の方が起こりやすいといわれています。
月に2~3回市販の鎮痛薬を服用する程度なら、複合薬でもかまいません。しかし、週2日以上服用しているという場合は単一成分の方がいいですね。市販薬を購入する際に表示を確認してみてください。もちろん単一成分のものだからたくさん飲んでいいというわけではなく、多く飲むと胃や腎臓を悪くしたりなど、ほかの弊害も出てきます。月に10日までが市販の鎮痛薬を飲むギリギリのラインですね。
■後編では頭痛外来で処方される頭痛の「予防薬」や、頭痛持ちで酒飲み必見の、酒と頭痛との関係にも迫っていきたい。
(石徹白未亜)