コラム
仁科友里の「女のためのテレビ深読み週報」

加護亜依、再婚祝福への感謝ツイートに見た“こじれた親と娘”の片鱗

2016/08/11 21:00
加護亜依オフィシャルブログより

羨望、嫉妬、嫌悪、共感、慈愛――私たちの心のどこかを刺激する人気芸能人たち。ライター・仁科友里が、そんな芸能人の発言にくすぐられる“女心の深層”を暴きます。

<今回の芸能人>
「何が幸せって、一緒に喜んでくれたファンの皆さんの優しさが一番嬉しかったです!!!」加護亜依
(公式Twitter、8月8日)

 斉藤由貴が、娘と息子を持つ母親に扮したauのCM。母親が娘にだけ金を出させるのが、本当に不思議である。母親と娘がカフェに行くと、au WALLE(電子マネー)が使えるとわかる。母親は「見たいなぁ」と暗に支払いを要求し、娘が支払いを認めると、しれっとした顔で「これも」とマカロンを追加注文する。娘に「おごって」と具体的な言葉を発することなく、自分の希望を通しているのだ。一方息子には、「タマゴを買って来い」と命令するが、拒否されて終わる。はっきりと頼んだわけでもないのに、娘だけがきっちり母親の期待に応える姿を見ると、映画『ジョイ・ラック・クラブ』を思い出す。

 中国で貧困にあえぎ、辛酸をなめた女性たちが、自由の国アメリカに移住して娘を産む。合理的精神に育まれた娘たちは、中国での因習を引きずる母親たちに反発を覚え衝突するが、母親の人生をたどることで、和解する。映画の中で、娘がこうつぶやく。「母の声なき声が聞こえる」。これは、娘は母親がどうしてほしいのか、言われなくても感じ取ることができる、亡くなってもなお、母と娘は絆で結ばれていることを示す感動的なシーンだが、一歩間違うと親による娘の“支配”になりかねないという意味で、怖いものに私には感じられる。

 子どもが親に金を出すことは、“親孝行”といわれる。CMで娘が母親に「しょうがないなぁ」とお茶代をおごるのも、「親孝行はいいことである」という前提があってこそである。そう考えると、売れた芸能人が両親に豪邸をプレゼントすることは、典型的な“親孝行”だろう。が、“親孝行”の全てがいい話で終わらず、親族間のトラブルに発展することもある。

 例えば、中森明菜は親ときょうだいのためにビルを買い、事業の準備金も用意する“親孝行”をするが、放漫経営で事業は常に失敗、事務所に小遣いをせびるなど家族にたかられており、これが自殺未遂の遠因だと報道されたことがある。また、占い師による洗脳騒動で騒がれた中島知子も、騒動の発端は数十年に及ぶ実家と妹夫婦への仕送りに耐えかねたことが原因と「婦人公論」(中央公論社)で明かしている。親兄弟全員の面倒を見る義理はないと思うが、明菜も中島も自分の精神状態が限界に達するまで、なぜか仕送りをやめなかったようだ。

 しかし、男性芸能人で“親孝行”が行きすぎて、親族に利用された話を私はあまり聞いたことがない。なぜ女性だけがトラブルになるのかを考えた時に思い浮かぶのが、「声なき声が聞こえる」なのである。女性は、口に出さずとも親のしてほしいことがわかるので、過剰に与えてしまう。故に相手も図に乗ってトラブルに発展するのではないだろうか。

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