カルチャー
「ブスiD」オーディションの起こした波紋

応募条件“我こそはと思うブス”――炎上した「ブスiD」オーディションの波紋と背景

2016/08/14 21:00
主催者の柴崎大智氏

 数年前から「そろそろ終わる」と言われ続けるも、毎日のように新しいアイドルグループが誕生し、アイドルを目指す女の子も減ることがない、現在の女性アイドルブーム。最近ではオタク系やヘビーメタル系、ぽっちゃり系など、他グループとの差別化を図るために、キャラ設定やテーマなどさまざまな趣向を凝らしたグループも珍しくなくなってきた。

 そんな中、7月某日、講談社が主催する女性アイドルオーディション「ミスiD」の名をもじったオーディションイベント「ブスiD~悩ましいニッポンの私~」が、阿佐ヶ谷ロフトAにて行われた。イベント開催前の告知ページを見る限りでは、その名の通り、強烈な個性を持った“ブス”のアイドルを発掘しようという企画のようだ。審査するのは、本家ミスiD2015でグランプリに選出された水野しず氏や、ロマンポルシェのロマン優光氏、カルチャーマガジン「TRASH‐UP!!」編集長の屑山屑男氏などの著名人ら。

■「ブスiD」なるオーディションイベントが始まった
 イベント前にはHP等で約2週間、「18~28歳前後の我こそはと思うブスのあなた」「東京近郊の在住者」「歌やダンス等の経験は不問」といった応募条件のもと、顔写真や志望動機、自己PR文等の応募書類を募集。50名ほどの応募者から書類審査を経て、イベント当日には登壇を果たした10名のファイナリストをゲスト審査員が審査する、公開型“オーディション”が行われた。

 当日、ファイナリストには1人につき3分間の自由なアピールタイムが設けられた。これまで容姿コンプレックスのために、抑え込んできたアイドルになりたいという気持ちをスピーチする者、容姿には自信がないけども歌手になりたい気持ちを歌唱で表現する者、自分の顔遍歴を自虐まじりにフリップで紹介して笑いを取りにいく者、「自分は別にブスではないのでこの中に入れば1番になれると思う」と宣言してしまう者など、アピール内容はさまざまだった。

 「世間的にはブスの類に入るけれども磨けば光る」といったアイドルの原石を探すのか、造形としての容姿が「ブス」な女の子ナンバーワンを決めるのか、イベント開催前だけでなく、グランプリや特別賞が決定した後も、その趣旨やブスの定義、評価基準などは説明されなかった。

 そのためTwitter上にはイベント参加者を中心に賛否の声が巻き起こり、ネットは炎上。「明らかにファイナリストは全員可愛いのだが?」「出場者も審査員も誰も得をしないクソイベント」「ブスは個性でもなく、ただの汚点」などのイベント自体に懐疑的な姿勢を取る意見や、さらには「大事なのは審査員でも観客でもなく、応募者たちがこのブスiDに対しどう感じたかだけ」「ブスという言葉が単純に不快」「ブスiDは企画者が女ではなく男という時点で気持ち悪さしかない」といった、どんな狙いがあろうとも、“ブス”を扱うことに対する嫌悪感や怒りを露わにするコメントも数多く見受けられた。

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