参院選で落選すると容赦なく追い出し! 議員事務所と秘書の引っ越し事情
国会議員秘書歴20年の神澤志万と申します。セクハラ、パワハラ当たり前! 映画もテレビドラマもかなわないリアルな国会とその周辺について、現役議員秘書が暴露します。
■落選した議員事務所は、容赦なく追い出される
参議院選挙は、54.70%という投票率でした。過去4番目の低さだったとか。なんだか、舛添要一さんが都知事を辞職するまでの経緯が強烈すぎて、選挙中、街頭での反応はいまひとつ。特に都内の街頭活動では、都知事選挙と間違う人も多く、説明にひと苦労しました。まー、ワイドショーがずっと都知事選の候補者の話題ばかりだったようなので、しょうがないですよね。
参議院議員会館は、この時期、とても嫌な雰囲気が漂っています。というのは、今回の選挙で落選してしまった議員事務所の引っ越し作業が行われているからです。落選後の議員事務室引き渡し作業は、かなり過酷で、落選して泣く暇も与えられません。
なぜなら10日の投開票日の翌日の11日の月曜日には、選挙区で当選した候補者たちが正式に議員になってしまうからです。各都道府県の選挙管理委員会で行われる付与式で当選証書を受け取ると、正式に「参議院議員」になります。
一方、落選した議員と引退する議員の任期は7月25日までなのですが、翌26日には新人議員たちに参議院議員会館の議員事務室が引き渡されるため、改装作業などもありますから、実際には15日までに事務室を引渡さなくてはなりません
議員会館を管理しているサービスセンターという部署から、「議員事務室の引き渡し完了確認は、いつになりそうですか?」と、毎日電話がかかってきます。引き渡し予定日の3日前ともなれば、朝、昼、夜と電話があり、担当者の事務室訪問もあります。
参議院から支給されている備品が確認され、棚や机には「備品」と書かれた紙がぺたぺたと貼られます。
初めてその様子を見た時は、まるで「借金取りに家具を差し押さえられてしまった不憫な家庭」のように感じました。落選した議員事務所には、参議院の職員からの、そのくらい「容赦ない仕打ち」が待っているのです。
秘書たちは、この時一番、職員たちを憎らしく思うんじゃないでしょうか。彼らは国家公務員ですから、秘書のように選挙の結果によって職業を失うこともなく、選挙の過酷さも知りません。秘書たちは、つい「どうして自分たちはこんなにも苦労しているのに、何も知らない職員に、まるで追い出されるかのような対応をされないといけないの……?」と思っちゃうんです。
■人付き合いが悪い秘書は、再就職に苦労する
そういう事情で、選挙後の参議院議員会館の各フロアのゴミ置き場は、ゴミの山となっています。長く務めていた議員の事務所ほど資料も膨大で、作業も大変そうです。特に現役閣僚なのに落選した法務大臣の岩城光英事務所には3期18年分の資料があるのですから、想像を絶する作業をしていると思います。
ドアはぴったりと閉められていて、秘書の方にあいさつするのもはばかられる重たい空気です。当選した議員事務所の秘書たちも、明るいのは事務室の中だけ。廊下に出た途端、重たい空気に触れるので、素直に喜んではいられない状況なんですよ。
落選した議員の秘書たちは、新しいボスを探さなくてはなりません。なので、この時期は秘書たちの再就職活動が活発化します。神澤のところにも、就職を希望する方たちから続々と履歴書が届き始めています。参議院でいえば、こういう改選時期が就職活動のグッドタイミングなんですね。以前も書いてますが、秘書の採用は基本的にコネなので、新人議員事務所が秘書採用を斡旋する流れに遅れないように、活動開始されることが多いです。
コネとともに重要なのが、日ごろの人間関係です。優秀でも真面目すぎで人付き合いが悪い秘書は、再就職に苦労します(笑)。これは議員も同じで、ひたすら真面目なだけでは、立候補の時に推薦がもらえなかったりしますよ。
来週には、新人議員の事務室割り当ての抽選が行われます。初当選の方も多いので、がらりと雰囲気が変わるのでしょうね。神澤の知人秘書たちが、どの事務所に移動するのかも興味深いところです。秘書はほとんど議員を選べないので、これまたいろいろあったりしますが、それはまた別の機会に。
そんなわけで参議院はしばらくバタバタなので、議員会館訪問は、7月26日以降がオススメです(笑)。