カルチャー
[女性誌速攻レビュー]「VERY」8月号

OLには許されず、ママには許される!?  「VERY」に見る“自分へのご褒美”観

2016/07/18 21:00

 そこで、古市さんが導き出した可能性は「安楽死が合法化される未来」でした。古市さんは、近い将来、安楽死によってもたらされる未来を興味深く予想しています。例えば、将来「安楽死特典」が設けられ、安楽死を選択した人だけが見られる映画があったり、金銭がもらえたりしたら、どうなるのだろう? と夢想します。

 このテーマは、「VERY」読者には他人事ではないはず。子どもが自分の死を看取るとき、親としてどんな死に方をするのがベストなのかを考えるきっかけになるのではないでしょうか。ただ「VERY」ママが老いて死ぬのは、まだまだ先のこと。おそらくそのときは子どもも、「VERY」世代以上の年齢になっているはずです。遠い将来のこと、しかもいざ死ぬときに、そんな綺麗ごとを言えるのかどうか定かではありません。子どものために、と用意周到に考えがちな「VERY」ですが、今後「死」についてどう扱っていくのか興味深いです。

 「VERY」ママのようなお金持ちであれば、介護付き老人ホームに入る……なんてことを考えそうですが、そこが安住の地である保証はありません。とすると、安楽死にも希望を見てしまうのですが、それは筆者が単身者だからでしょうか。

■ナショナリティ、ジェンダーを考えさせる「VERY」

 クリス‐ウェブ佳子さんの連載「WWW4W」も取り上げましょう。コラムの内容を要約すると、ロシア人は「愛想笑いも見知らぬ人に微笑むこともしないけれど、親しくなれば結構なスキンシップで交流する」と思っているクリスさんが、次女の友達であるロシア人の女の子(そしてその子はクリスさんのロシア人のイメージ通り)に、次女を通じて、挨拶のイロハを教えることにしたというものでした。

 確かに日本で暮らしていくには、愛想笑いと挨拶は必要不可欠……とは思いつつ、そこにナショナリティがかかわってくると、途端に「本当にこれでいいのだろうか?」と、考え込んでしまう人も多いのではないでしょうか。さらに深読みして、ジェンダーの観点で、この国の“女の子” には愛想笑いと挨拶が必要なのか? と考えてしまうと、判断に難しいものがあります。筆者のように、ナショナリティやジェンダーで考え込んでしまう方が、もしかして、ガチガチの偏見で凝り固まっているのでしょうか。シンプルに「郷に入れば郷に従え」でいいのでしょうか。「VERY」にはこのコラムのように、読者をいろいろ考えさせる種がいくつも埋まっているのです。
(芹沢芳子)

最終更新:2016/07/19 19:19
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