「nina’s」の“パパのいる日”特集が、パパへの接待企画になっても自然に受け入れられる理由
■普段は炎上女王でも、「nina’s」の“癒やし”となっている木下優樹菜
すっかり忘れておりましたが、「nina’s」は普通の育児誌ではありません。「冷凍食品」「電子レンジ」「キャラクター物」「テレビで子守り」が存在しないパラレルワールド。この特集でよくわかったのは、クリエイティブ夫婦は一心同体であるということ。体に良さそうな手作り食品をがんばって作るママには、もちろんそれを喜んで食べるパパがいて、絶対布オムツ派のママには、それを毎朝洗うパパがいる。こうなると家事育児におけるパパの参加度など、まったく論点ではありません。
休みの日にはパパがダンボールを使った工作教室開いちゃう「nina’s」の“HAPPYかぞく思想”を支えるのは、クリエイティブ夫婦が口にゴムくわえて引っ張り合うような絶妙な緊張関係。パパがついついラーメン食べて帰ったら、紙オムツって便利だな~なんて言ってたら、即ゴムがバッチンと弾け、ゲームは終了なのです。
ピリピリムードすら感じてしまう特集の後に読むと、なんとも脱力してしまうのが、炎上女王かつ「nina’s」の番長である、木下優樹菜の連載コラム「ユキナんち。」。次女も誕生し、今や完全に「nina’s」の顔になっている木下ですが、特集に見られるようなクリエイティブ圧力とはまったく無縁の暮らしを送っている様子です。今回は「母の日にお花をもらった話」「長女自転車デビュー」「最近ハマってるピクニック」の3本立て。「初母の日。リー(長女)が前日に軽くバラしたことも含めて、トータルで泣いた」「とりあえず自分がチャリンコの練習をしたときに、お父さんにやってもらった練習の仕方で『後ろ持ってるよ、持ってるよ~』って言いながら持ってないやつ(笑)」と、独特のユキナ文体で家族の様子をつづります。
「毎日、子どもたちが元気に笑っていてくれたら、それだけで幸せだなって思う。毎日同じように、朝起きて、ご飯食べさせて、園に送って……って、その繰り返しなんだけど、それが出来ることが幸せなんだな、って。目の前に家族がいること。朝が普通に来ることが一番幸せ。特別じゃない毎日、今、この瞬間をしっかり楽しもうね。生きてるって素晴らしい! 拍手!」。この“当たり前の日常”に、「オシャレ」「ほっこり」「自然派」と乗せられるだけの付加価値を乗せて商売にしてきた「nina’s」。同誌で、木下がもてはやされるというのは、なかなか興味深い現象だと思うのです。
(西澤千央)