「痴女AVは男と女で作り上げた」――男性向け/女性向けに分断された、エロのこれから
女性誌でのセックス特集、そして女性向けAVが登場してだいぶ久しい。この2つのコンテンツは、「セックスにおける願望や欲望は男女でまったく異なる」という認識を加速させてきた感がある。この、セックスで男女はわかり合えないという構図を、我々は素直に受け止めていいものなのか。
ライターであり、アダルトメディア研究家の安田理央氏は「アダルトメディアにおける“痴女”というジャンルは、男女が一緒になって作った」と語る。安田氏は先日、『痴女の誕生 アダルトメディアは女性をどう描いてきたのか』(太田出版)を刊行。「美少女」「熟女・人妻」「素人」「痴女」「ニューハーフ・男の娘(女装)」という5つの属性を軸に、AVのみならず、エロ本や風俗といったアダルト分野全般にわたって、その歴史や全貌を紐解いている。今回は安田氏に、AV業界の現状や、「痴女」の誕生、AVやセックスをめぐる男と女、そしてその変化について聞いた。
■よりハードなプレイを求められる女優たち――AV業界の今
――まずはじめに、最近はどんなAVのジャンルがブームなのでしょうか?
安田理央氏(以下、安田) 実はここ数年は、人気がかなり分散していてハッキリとした流行やブームがないんです。好みがとても多様化している中で、みんな、たくさんの種類から自分の好きなジャンルを見つけているという現状でしょう。よく、「不況になると巨乳がはやる」なんて言われますが、実はそうではなくて、巨乳を持つ良い女優さんがたくさん出てくれば巨乳ブームになるとも言えます。ブームは、その時々の女優ありきという面もあるんです。AV女優側はというと、よりハードでさまざまなプレイが求められるようになってきましたね。
――たくさんのAV女優が活躍されているので、競争が激しくなっているのかもしれません。
安田 現在、AVへの出演を強要したプロダクションが問題になっていますが、自らAV出演に応募してくる女性もすごく多いことは事実です。今は、SNSのフォロワー数や作品の売り上げなど、数値化された人気度が重要視されています。AV女優は基本的に顔バレを避けるために、地上波やBS、週刊誌、ネットなどさまざまなメディアにおける露出(パブ)規制をしているのですが、SNSのフォロワー数という可視化された人気を上げるために、徐々に露出媒体の幅を広げていくんです。お金のためというより、人気のため。良いのか悪いのか、自然と女優のモチベーションをアップするようなシステムになってしまっている。「ファンのために」と常々言っているAV女優さんは多く、本当にアイドルと同じ感じなんですよね。