「継がなくていいお墓が増えていく」 葬儀と遺骨の行方はどう選ぶべきか
■直葬はかえって負担が重くなる
――今後、一般化していきそうな葬儀の形式とはなんでしょうか?
葬儀に関して言えば、「簡素化」、「個人化」、「個性化」と言われています。簡素化は盛大なお葬式ではなくてシンプルに身内だけでひっそりと行うという流れ。個人化は「◯◯家」のお葬式ではなくて、「◯◯さん」のお葬式ということで、親戚や知り合いが大勢来るのではなく、その人の親しい知人が集まるというスタイル。個性化というのは、その人らしいお別れの場をつくる流れです。
――最近は「直葬」という葬儀の形もよく聞きます。賛否両論あるようですが、実際には受け入れられていますか?
吉川 「直葬」は通夜や葬儀・告別式といった儀式を行わず、火葬のみで済ませるスタイルですね。今は6人に1人くらいの頻度で行われると言われていて、とても増えています。
ただ、直葬にはマイナスな面もあります。例えば旦那さんが亡くなった場合、奥さんは1人で亡くなった後の煩雑な手続きを行わなければいけません。役所や保険、相続などの事務手続きに追われている時に、後々訃報を知った知人からお悔やみの電話やお香典がくることで、さらに忙しくなってしまうことがあります。結果、「簡単でもいいから葬儀・告別式を開いておけばよかった」という方が非常に多いです。葬儀があれば、その間は周りに助けてくれる親戚もいるけれど、直葬の場合は1人で全てやらなくてはいけないので、負担が重くなってしまいます。
葬儀はお金もかかるから、ということで敬遠される方もいますが、お香典をいただくのであれば、上手にやりくりすれば大幅なマイナスを避けることもできます。総合的に考えると、ある程度、声をかけるべき人には声をかけて、こぢんまりとでも式をやる方が合理的だと言えます。そういう意味でも事前に葬儀に関して比較検討しておくことはとても大切だと思います。
■「継がなくてもよいお墓」が1つのキーワード
――では、お墓に関しては、どのように選んだらよいでしょうか?
吉川 お墓の場合は建てて終わりではなく、誰かがお参りして続くものなので、残された人がどのように死を受け止め、次の代に受け継いでいくかという視点が大切です。また、多くの人は今あるお墓に入るので、例えば今のお墓が遠方にあるから近いところに新しいお墓を建てるとか、永代供養にしてお寺さんに守っていただくとか、お墓をどう守り、受け継いでいくかという視点を持って適切な選択をしていくことは大事なポイントです。
「墓じまい」という言葉が浸透しましたが、これもお墓をどうやってつないでいくかという考えからですよね。放置して誰も守る人がいない状況をつくるのではなく、きちんと手続きを踏んでお墓を閉じた上で、中の遺骨を今後どう守っていくか選んでいく。「墓じまい」はそういった前向きな考えの上で出てくる選択肢の1つです。
今後は「継がなくてもよいお墓」が1つのキーワードになると思います。20年後には生涯未婚率が女性20%、男性も30%が予想される中で、継ぐ人がいない墓は今後急激に増加するでしょう。実際、継ぐ人がいなければ墓守する人がいないため、新しいお墓を建てることもできない。そこで、新しくお墓を建てるにしても、期限つき墓地に注目が集まっています。墓地の使用期限が決まっていれば、期限が切れた後は自動的に永代供養に切り替えられるので、継ぐ人がいない状況でも墓地を購入することができます。その他にも納骨堂や樹木葬墓地、散骨といった「継がなくてよい」葬送方法、つまり「承継者不要」という形は明らかに増えてくると思います。
(田村はるか)
吉川美津子(きっかわ・みつこ)
総合情報サイト「All About」で葬儀・葬式ガイドをつとめる。大手葬儀社、墓石・仏具店で実務を積み、専門学校の葬祭ビジネス学科を運営。その後、葬儀社起業サポートと葬儀ビジネスに関するコンサルティング業務を開始。弔事グッズの企画・開発なども行っている。年間50本以上「終活」「葬儀」「お墓」について講演、関連セミナーを開催している。