「継がなくていいお墓が増えていく」 葬儀と遺骨の行方はどう選ぶべきか
核家族化、未婚率が上がっていく現代において、今あるお墓をどう守っていくか、自分たちにとってベストなお墓とは何かという問題は、遅かれ早かれ多くの人が直面する。さらに最近では葬儀もさまざまな形が登場し、自身の最後、家族の最後をどのように送り出すかを多くの選択肢の中から選ばなくてはいけない。最適な葬儀、お墓の選択について、総合情報サイト「All About」で葬儀・葬式ガイドをつとめる吉川美津子さんに話を聞いた。
■残される側がどう弔うのか
――葬儀やお墓について考え始めるのは、一般的に何歳くらいからでしょうか?
吉川美津子さん(以下、吉川) 自分の葬儀、お墓という意味では60歳以上の方が中心です。定年を迎えて、これからどう過ごそうかと考えた時に、お金の面や暮らし方と同時に葬儀、お墓のことを勉強しようという方が非常に多いです。自分の親の葬儀やお墓でいうと50歳代くらいの方が多く、親の病気や認知症、それに伴う要介護認定を受けるタイミングで考え始める方が多いです。
私は自分の葬儀やお墓について、そこまで若い時から取り掛かる必要はないと思っていますが、先祖を含めて死者をどう弔うかという供養の視点はもっておきたいものですね。普段飲んでいる薬、金融・資産の情報、葬儀やお墓の希望、介護の希望を記しておくようなツールとして「エンディングノート」といったものがありますが、これは比較的若い年齢から取り掛かるとよいと思います。
というのも、昔はお金が入っているところといえば通常の銀行口座だけでしたが、今はネットバンクがあって、お金や資産がどこにあるのか簡単にわからなかったり、昔は住所録1つで判断できた知り合いの連絡先が、今は携帯のみに入れている人が多いのでパスワードがないと見ることができなかったりします。万が一事故や病気になった時のためにも、第三者に見てもらえる形で自分の記録を残すことには取り組んでおいた方がよいと思います。
――さまざまな形の葬儀がありますが、どこに優先順位を置いて選択するべきでしょうか?
吉川 残された人がどういう形で故人を弔いたいのかが大切です。セミナーなどで、「ご自分の葬儀はどうしたいですか?」と聞くと、多くの人が「自分の葬儀は簡単でいい」とおっしゃいます。ただ、残される家族の側からすると「簡単でもいいけれど、自分の心の整理がつくような葬儀にしたい」と考える方が多いんですね。逝く側と残される側の考え方が明らかに違うなと感じています。
逝く側の思いをある程度優先させることも大切ですが、やはり葬儀は残された人たちのためのもの。残された人がどういう形で故人を弔い、その死と向き合うかを優先して考えるとよいと思います。
――葬儀では「生前葬」が一時話題になりましたが、実際はどうでしょうか?
吉川 実際には、生前葬はほとんど行われていないです。ただ、それに変わるものとして生前、特に喜寿や米寿の記念日に「感謝の会」といったお祝いの席を設けることはあります。
私は時折、介護の現場にも携わっていて、それこそ死を目の前にした方と実際に同じ時間を過ごすことがあります。まぶたしか動かせない、筋力が弱っていて話すこともできない方がいらっしゃったのですが、その方は「時々外に出ましょうか」と聞いても「今の姿は人に見られたくないし、変な同情もされたくないから外に出たくない」とおっしゃっていました。一方で、「会いたい人に会っておけばよかった」「体が元気で動く時に、いろんな人に感謝を伝えたかった」といった言葉も聞くことが多いです。
生前葬とは違う形ではありますが、記念日や何かをきっかけに感謝を伝える場を設けることは、今後増えていくのではないかと感じています。