カルチャー
[女性誌速攻レビュー]「婦人公論」6月28日号

「婦人公論」の“新恋人”が誕生か!? 生きる高齢者福祉・氷川きよしを脅かす、綾野剛の「女性論」

2016/06/22 16:00
「婦人公論」6月28日号(中央公論新社)

 今号の「婦人公論」(中央公論新社)、特集は「【保存版】家族が倒れた時 慌てないための新知識」です。「婦人公論」の特集は、「福を呼ぶ」特集に代表されるような若干スピリチュアルが入ったふんわりしたもの、貯蓄特集に代表されるガッチリ実用系、片付け特集はその半々といった感じですが、今号はまさにキング・オブ・ガッチリの「知恵モノ」企画です。特集の冒頭が「一命を取り留める緊急対応マニュアル」ですから。しかもその次のページが「大黒柱の急死でも路頭に迷わない『死亡保険』のお値段は?」です。本当に「婦人公論」世代の「死」と「カネ」のドライブ感は他の追随を許しませんよ。

<トピックス>
◎特集 【保存版】家族が倒れた時 慌てないための新知識
◎宮下奈都 「ホルモンのせい」で書き始めた小説が夢の本屋大賞に
◎綾野剛 役柄にも、女性に対しても、ブレない僕のポリシー

■家庭も仕事も目標なくやっていた方が案外続くもの

 さてヒリヒリした現実感たっぷりの特集の次には、少し夢のあるインタビューに目を向けてみましょう。作家・宮下奈都の「『ホルモンのせい』で書き始めた小説が夢の本屋大賞に」を見てみたいと思います。普段は地元・福井で3人の子どもを育てながら小説を書いているという宮下。小説を書き始めたきっかけは「3人目の子どもがお腹にいるとき、猛然と小説を書きたくなった」から。タイトルの「ホルモンのせい」とはそういうことのようです。「上の息子たちは当時3歳と1歳の男の子で、とんでもなく手のかかる時期でした。さらに赤ん坊が加わったら、私の人生は育児になぎ倒されてしまう。とにかく何かしなきゃ、という切実な焦りで小説を書き始めたら、これが楽しくて楽しくて!」。

 地方に暮らす普通の家族が突然「牧場が一つあるだけで、いちばん近いスーパーまで山道をくだって37km」という北海道の集落に山村留学をしたのは、「上の子が中学3年になるころ」。夫からの突拍子もない提案に最初は抵抗したものの、「周囲から心配されればされるほど、『ちょっと1年脇道にそれるだけで後戻りできない“社会”って何よ』とむしろ闘志がむくむくと湧いてきて」。貯金はすっかりなくなったようですが、家族の変化、そして自分自身の変化に「夫も私も後悔はしていません」とのこと。

 1つの会社をマジメに勤め上げていれば幸せになれた時代とは異なり、今は「幸せ」の尺度が個々に異なる時。宮下も「何かやるからには成功しないといけないという親の世代と、楽しむことのほうが大事と考える私たち世代のギャップを感じます」と言っているように、結婚にしても仕事にしても子育てにしても、上世代の「幸せ」の縛りをどうやってほどいていくのかが、これから「婦人公論」世代になる人たちの大きな課題なのだろうなと思いました。しかし40代後半からの山暮らしかぁ……通販は届くのだろうか。

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