「DV加害者は自分が被害者という意識」愛しているはずの人に暴力を振るってしまう心理とは?
■DV癖は治らないと言われるが、学べば変われる
――ステップに来てきちんと更生プログラムを受けられる加害者はいいですが、多くの加害者はDVの意識がないため、ステップに足を運ぶことは難しそうですよね。相談者はどのようにして夫を連れてくるのですか?
栗原 「ここの更生プログラムを受けるまで帰りません」と、ステップの電話番号を書いた置き手紙をして、ある日突然、家を出ていくケースは多いですね。そうすると、夫から「妻が出て行ってしまったのですが、そこはどのような所なのですか?」とうちに電話がかかってくるので、「良好な夫婦生活を送れるようお役に立つところです」と答えます。本人にDVの意識がないので、DVという言葉は使いません。夫は離婚をしたくないものだから飛んできますね。また、妻のお母さんが夫にステップを薦めるということも多いですね。DV加害者は権力のある人の意見にはすぐに従うんです。
アメリカでは警察にDVの通報があったら直ちに更生プログラムを実施するシステムなのですが、日本では法の中に入っていません。処罰で加害者を変えようとするだけです。留置所に入ったところで何も変わりません。何もすることがないので鬱になってしまう人もいる。それで出てくるので、またDVをしてしまう。
――もし、DVに遭ってしまったらどうすればいいのでしょうか。
栗原 相談できる相手を持つことです。そして、身体的暴力がある場合は逃げる場所を確保しておくこと。また、“自分”を維持するために趣味を持つことも大事です。月に1回、きれいに着物を着て歌舞伎を観に行くことでストレスを発散しているという相談者もいました。DV被害のことばかり考えていると心が病んでしまいますからね。あるいは、仕事を持っている女性は意外と重い被害者になっていないですね。職場で発散できますし、いろんな人と話せて知恵やアドバイスももらえます。専業主婦でDVを受けている場合が一番ひどい精神状態になりますね。誰も相談できる人がいなくて1人でずっと悩んでしまうので。
――読者の中にもDV被害に遭っている方がいるかもしれません。その方々に向けてメッセージをお願いします。
栗原 1人で悩まずに、更生プログラムにパートナーを送ってください。行政などに相談すると、「DV夫を変えることはできない」と言われますが、学べば変われます。現に、ステップで更生プログラムを受けた8割の加害者が変わり、別居から同居に移って良好な夫婦生活を送っていますよ。
(姫野ケイ)
栗原加代美(くりはら・かよみ)
NPO法人 女性・人権支援センター ステップ理事長。2011年4月から被害者支援の一環として、神奈川県初のDV加害者更生プログラムを始める。(男女一緒に開催)
・NPO法人 女性・人権支援センター ステップ