最も多い時、風俗嬢の数は100万人以上とも

中国の「性都」としてかつて栄えた東莞市 一斉摘発後に、驚くべき変貌を遂げていた

2016/06/08 15:00
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ショッピングモールやブランドショップも多い

 かつて「性都」といわれた街があった。中国広東省にある都市・東莞 (トウカン)だ。東莞は90年代以降、出稼ぎ労働者の急増とともに、それらの男性の相手をするための風俗嬢が急激に増加していった街だ。市内の風俗嬢の数は最も多い時は100万人以上ともいわれており、高級コンパニオンから「立ちんぼ」と呼ばれる売春婦まで、その値段もピンキリだったという。そんな東莞に世界中から男性客が夜な夜な大枚握りしめて訪れ、2010年には「性都」と呼ばれるまでに性風俗産業が発達した。

 しかし、14年2月に、性都は突如終焉を迎えることになる。警察による大規模な売春一斉摘発が行われ、摘発された業者は300、逮捕者1,000人あまり、100万人以上いたといわれる風俗嬢たちは一斉に職を失ったのである。

「東莞で売春していた外国人女性たちは国に帰り、中国人売春婦は深センや各都市の風俗店等に移ったと聞きます。中国人売春婦はもともと、出生後すぐに、親の借金のカタに売られたような女性がほとんど。戸籍もなければパスポートも持ってないため、本土から出ることすらできません」(日系企業駐在員)

 しかし職を失ったのは彼女たちだけではない。売春目当てで訪れる旅行客を相手にしていたホテルや飲食店からはすっかり客足が失われ、閉店が相次ぎ、摘発直後はゴーストタウン化したという噂を聞いていた。そんな一斉摘発から2年。街はどうなっているのだろうか? 今を知るべく、性都と呼ばれた頃を詳しく知る事情通と共に東莞へ向かった。

■ホテル内の売春サウナはなくなっていた


 香港から中国本土に入るゲートウェイの街、深センから高速鉄道で30分、常平駅に到着。同駅はもともと東莞駅という名前だったが14年に改称された。駅前からはタクシーで東莞市の中心部へ向かう。途中、都市開発の真っただ中なのか、建設中のビルやマンションをいくつも見かけた。ゴーストタウンを想像していたので、少し驚いた。

 10分ほどで中心部に到着した。交差点を囲むように、大きなホテルが3軒ある。この3軒の中にあった売春目的のサウナが有名だったという。そのうちのひとつに入り、エレベーターに乗ると、最上階の案内プレートだけ取り外した跡があり、別階のナイトクラブと日本人スナックは残っていた。かつてサウナがあった最上階に上がってみると、電気もついておらず、カビ臭く、エレベーター前の受付は無人だった。以前は受付で予約すると、数人のコンパニオンが部屋にやって来て、その中から好みの女性を選んでプレイする仕組みだったという。また、別階のナイトクラブで気に入ったホステスを部屋に呼ぶこともできたらしいが、そのナイトクラブも今は宿泊者専用の普通のキャバクラになっていた。

 ホテルを出て、昔、置屋通りだったという場所に行ってみた。一見、なんの変哲もない路地の古いアパートの前に、以前は客引きの女性が立っていたという。売春婦は上のアパートで待機していて、客を連れて行き、部屋でプレイできるシステムだった。

 近くのアダルトショップの店員に「今でもこの辺りに立ちんぼはいるのか」と聞いてみた。店員は「夜になったら立ってるけど、本当に少ししかいない」と言った。アダルトショップもすっかり客足が遠のいたのか、商品はだいぶ古くなっていた。


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