“自分”を取り戻すことがエネルギーに! がん治療の副作用に悩む人に寄り添う資生堂の挑戦
しかし同時にジレンマも。外見上の悩みとあって、来所するのではなく通販を希望する人が少なくないというのだ。「ただ一人一人のお客様によって、肌悩みや肌色、肌質が異なりますし、その方にあわせたアイテムと色選び、使い方をご紹介するので通販展開は現時点では考えておりません。むしろ、外出するよいきっかけになればと思います」(小林さん)というように、プライバシー保護とメイクの完成度の両立には難しい壁が立ちはだかっている。
また特にがん患者に多いのが、「治療中に外見のことを悩んでいいのだろうか」という自制を働かせる人だという。実際に同センターに予約をするのは、患者本人ではなく、その家族というパターンも少なくないそうだ。
しかし生きていれば、健康な時も病気の時もあり、それはどのタイミングで訪れるかはわからない。特に、女性は化粧の力を普段から当たり前に取り込み、日常の一つ(自分がイメージする「本来の自分」)となっているが、それが急な病や事故で化粧ができなくなり、イメージする「自分」ではなくなったら、どれだけ大きなストレスになるだろうか。
資生堂のコーポレートメッセージとして有名な「一瞬も 一生も 美しく」。今この瞬間の“一瞬”を美しくするという化粧の力が、“一生”の美しさにつながっていく。もちろん“一瞬”の中には、健康な時も、闘病の時も含まれているのだろう。そのためにできることを企業として全力でやっていくという姿勢に、すべての女性を美しくするという気概を感じた。
超高齢社会やがんが国民病となる時代を見据えて、商品開発や啓蒙活動を展開してきた資生堂。一方、私たちも「治療中に外見のことを悩んでいいのだろうか」という自制を見直し、クオリティーオブライフについてきちんと向き合う時期に来ているのではないだろうか。
◇資生堂ライフクオリティービューティーセンター
◇がん患者さんのための外見ケアBOOK
恩田雅世(おんだ・まさよ)
コスメティックプランナー。数社の化粧品メーカーで化粧品の企画・開発に携わり独立。現在、フリーランスとして「ベルサイユのばらコスメ」開発プロジェクトのほか、様々な化粧品の企画プロデュースに携わっている。コスメと女性心理に関する記事の執筆も行っている。
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