カルチャー
『潜入 生活保護の闇現場』著者・長田龍亮氏インタビュー

「貧困ビジネス」がなくならないワケ あえて劣悪な環境を選ぶ人もいる生活保護の現実

2016/05/23 15:00

■女性も貧困ビジネスの餌食に?

――どんな人が施設で生活されていたのですか?

長田 元ヤクザや元受刑者、そして元自衛官などいろいろいましたね。知的障害者や統合失調症などの精神を病んでいる人も目立ちました。風俗が病的に好きで、性欲が抑えられずに近所の小さな女の子に抱きついて逮捕された人もいましたが、責任能力がないとみなされて起訴されませんでした。

 また、酔っぱらうと路上で「大」の字になって寝るクセのあった人は、自動車にはねられて亡くなっています。このような人は就職も難しいので生活保護に頼るしかなく、和合元代表はそれにつけ込んでいたのです。

――生活保護は、若くて健康体でももらえるのですか?

長田 はい。僕でももらえたので、むしろ驚きました。資産がなくて、扶養してくれる親族がいなければ、働くことができても受けられます。

――女性で入居している人もいたそうですね。

長田 少しですが、いました。もちろん施設は別です。やはり精神を病んでいて仕事はあまりできそうにない印象でしたが、和合元代表が経営していた食堂で働いたりしていました。

 もちろん僕のような若者は少数で、働けない高齢者がほとんどですね。90歳を超えているお年寄りもいて、オムツ替えはみんなでやっていました。こうして助け合える部分もユニティーにはあったのです。しかし、元代表の逮捕で急に全員が施設から追い出されることになってしまい、最終的にはアパートで孤独死した人もいました。

――著書では、行政の責任も指摘されています。

長田 はい。生活保護受給者が年々増えているのに対して、対応する福祉事務所のケースワーカーは不足しているので、まあ、もたれ合いですね。受給者が施設にいれば連絡や家庭訪問もしやすく、トラブルも施設側が解決してくれますから、管理がラクなんです。アパートに独り暮らしで働いていて、携帯電話を持っていないような人は、ケースワーカーが生活を把握するのも一苦労ですから。

――結局は、本人が劣悪な環境の低額施設での生活を「いい」と思えば、いいということになるのでしょうか。

長田 そうですね。取材していると、国民の権利である「健康で文化的な最低限度の生活」(※生活保護制度の根拠となる憲法第25条の規定)とは何なのか、「貧困ビジネス」とは何なのか、などを考えてしまいますね。まだわからないことだらけですが、僕は、ライターとして、この「世界」をありのまま伝え続けたいと思っています。
(伏見敬)

長田龍亮(おさだ・りゅうすけ)
1980年生まれ。偶然知った「ユニティー出発(たびだち)」で生活保護を受け、ルポを『実話ナックルズ』(ミリオン出版)で執筆し続ける。3月に『潜入 生活保護の闇現場』としてミリオン出版から刊行。

最終更新:2016/05/23 15:00
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