コラム
【連載】彼女が婚外恋愛に走った理由

「妊活」を乗り越えられたのは、婚外セックスのおかげ――恋人を「同志」と呼ぶママの真意

2016/05/01 16:00

 それからずっと数人の“恋人”との関係を重ねた。既婚者である現在の恋人と知り合ったのは今から10年近く前だ。

「30代前半のときにネットで知り合いました。まだSNSなどが普及していない当時、『ネットでも知り合える』という機会があることを知って、興味が湧いたんです。ほかの男性はすぐに『会おう』と言うのに、彼はそれほどガツガツしているわけでもなくて……。彼とは1年半くらいずっとメールだけのやりとりを続けていて、ある日『家、そんなに遠くないね。じゃあ会おう』ということになりました。最初は彼の見た目がチャラくて、タイプじゃありませんでしたね(笑)」

 以来、彼と「恋人」としての関係をスタートさせる。彼との関係は8年間続いたという。

「体の相性が良かったんですよね。性格の相性だったら主人の方が合っています。彼とのセックスはすごく幸せを感じましたし、男っぽいところも魅力的だった。彼の服にファンデーションが付くのを気にして、あまりくっつかないようにしていると、彼は逆にグッと顔を押し付けて強くハグしてくれたんですよ」

 8年間もの歴史を持つ2人には、互いに大きな出来事があった。まず彼の家庭に2人の子どもができ、沙織里さんはご主人から「そろそろ子どもを」と提案される。妊活期間が長引き苦労していた沙織里さんが穏やかでいられたのは「彼の存在があったから」だと振り返る。

「『ここは絶対に妊娠の可能性はない』という周期を狙って、彼とセックスしてました。お互いに家庭を第一に考える関係でしたので、彼は妊活に対して妬くことはありませんでしたが、一度、オスを見せてきましたね。『じゃあ、俺が作ろうか』って言い出して……。悪いけどちょっと引きました(笑)。私は主人との子どもが欲しかったので『あんたは部外者だから』って(笑)」

■出産後、「ちゃんとしよう」と思った
 
 その後、沙織里さんは無事妊娠し、第一子を授かることになる。

「あれだけ恋愛体質だったのに、今ではまったく男性に対して興味が湧きません。タイプの男性を見ても何とも思いませんし……。綺麗事を言うと、出産してから主人が『父』としてきちんと育児に向き合ってくれる姿を見て、私も無意識のうちに『ちゃんとしよう』と感じたのかもしれません。あと、単純にやり尽くしたんですよね。彼と長い間付き合って、いろんなことを経験しましたから」

 しかし現在も恋人との関係は続いている。直接会うことはなくなったが、毎日一度のメールのやりとりを欠かしていないそうだ。

「機会があれば会いたいなと思っていますけど、例えば今、彼と会うとしたら、主人に早く帰ってきてもらって子どもを預けて……という段取りが必要になる。そこまでして会おうとは思いません」

 家庭でさまざまな出来事があったものの、現在もつながり続けている2人。彼との関係を名付けるとしたら、と筆者は聞いてみた。

「男友達でしょうか。大事というわけでもないけれど、彼の前では私が自然体でいられます。それまで恋愛に重きを置いてきたのに、急にある日“母”になって。どこか嘘くさいなと感じる自分がいるんですよね。そのバランスを取ってくれる存在が彼です。彼は私にとって“同志”ですね。できれば年賀状のやりとりをしたいくらい(笑)」

 笑顔でそう話す沙織里さんは、非常に清々しい表情をしていた。
(文・イラスト/いしいのりえ)

最終更新:2016/05/01 16:00
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