漫画家・大橋裕之×とあるアラ子対談(後編)

「炎上してもへこたれない、はあちゅうになりたい」 ネット時代の漫画家が考える、批判への対処法

2016/04/17 17:00

■自意識過剰で何もつぶやけない

―― 読者の感想などをリツイートする方もいますね。

大橋 売るためには、したほうがいいなとは思うんですけどね……。自分がやるとなると、どう見られているか気にしちゃって、ほかのことが手につかなくなっちゃうんですよ。どこまでリツイートするか選ぶのもつらいし。完全にSNSに向いてないです。

アラ子  私は「とあるアラ子、性格良さそう」というつぶやきまでリツイートしてますよ。何やってるんでしょうね……。ツイッターって、つぶやくことが思いつかないんです。人のツイートを見るのは、本当に好きなのですが。私は、大橋さんの告知以外のツイートも是非読みたいです。自撮りをアップするのはどうですか?

大橋 「アイツどうしたんだろう」って思われるだけですよ!(笑) 僕は、100回つぶやこうとして、100回やめてます。「これどうなんだろう?」と気になりすぎて。飲みの席では細かいニュアンスを伝えやすいのでなんでも言いますけど、ネット上での自分の意見に、あまり自信がないんです。ツイートごとに、リツイートされないように設定する機能が欲しいくらいです。それで結局、ツイートがほぼ告知のみになってしまう。でも、こんなに自意識過剰で、怖い怖いと言っているのに、人前で紙芝居をやったりもして「矛盾してるじゃねえか」と自分でも思うんですけどね。頼まれたらうれしいんで、やれる範囲でやろうと思うんですけど。


アラ子 依頼されるって、すごくうれしいことですよね。私も、もっと依頼が増えるように頑張りたいです。そして、やっぱり一度くらいは炎上してみたい。はあちゅうさんみたいに批判に強い人になりたいですね。

 大橋さんは最新作『太郎は水になりたかった』が大好評ですよね。私はトーチwebでの連載も、いつも欠かさず読んでいます。もう太郎が可愛くて仕方なくて……。ご自身が原作のアニメ映画『音楽』の公開も控えていますし、これからメディアに登場する機会が増えるんじゃないですか? 

大橋 そうですね。ひとつ怖いことがありまして、4月にドラマに出演するんですよ。清野とおるさん原作で松江哲明監督の『その「おこだわり」、私にもくれよ!!』(テレビ東京系)なんですが、それにちょっとすごいシーンがあって。それが放送されてどうなるか、今から恐怖に震えてます。

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『音楽と漫画』より (C)大橋裕之/太田出版

(穂島秋桜)

大橋裕之(おおはし・ひろゆき)
1980年、愛知県生まれ。2005年より『謎漫画作品集』を皮切りに自費出版を始める。07年より週刊誌に連載を始め、現在「テレビブロス」(東京ニュース通信社)をはじめ数誌に連載。単行本は『音楽と漫画』(太田出版)、『シティライツ』全3巻(講談社)など。最新刊は『太郎は水になりたかった(1)』(リイド社)。


とあるアラ子(とある・あらこ)
1983年、東京都生まれ。2013年に恋人のCDを片っ端から聴くブログ「うんいち〜運命の一枚をさがせ〜」を開設。その後『何故わたしは恋人のCD棚を端から聴き、レビュするようになったのか漫画』を自費出版。16年『わたしはあの子と絶対ちがうの』(イースト・プレス)で商業出版デビュー。

最終更新:2016/04/17 17:00
太郎は水になりたかった (torch comics)
炎上上等