そもそも宿便なんて存在しない!? 逮捕者も出た“浣腸”健康法がはらむ矛盾と死の危険
「コーヒーエネマ」(別名・コーヒー浣腸)をご存知だろうか。肛門からコーヒーを入れて、腸内を洗浄する代替医療の一種だ。1940年代、ドイツの科学者マックス・ガーソンが、ガン治療の一部として使うようになった自然療法で、美容法として採用している人も多く、某国王室関係者をはじめ世界中の多くのセレブも取り入れていたという。故・川島なお美さんが、昨年ブログで「こんな世界があったなんて~~。お腹スッキリ、頭も冴えわたり、その後のお食事がさらに美味しかった』と、その驚きを綴ったことでも話題となった。
そもそも飲むためのコーヒーを、わざわざ肛門から注入する必要はあるのか? という疑問が湧くが、コーヒーエネマの提唱者によれば「そのまま飲むよりもコーヒーに含まれるカフェインが腸内で吸収され、副交感神経を刺激し、肝臓の機能を高め、大腸から吸収された有毒ガスや有害物質を解毒、排出するのだ」という。
その方法は、滴パックに入れたコーヒーに800~1000CCほどの温水(36℃が目安)を足し、管から直接肛門に入れて、時計回りにお腹を2~3分マッサージ。すると、驚くほど大量の便、いわゆる“宿便”が出てくる……という仕組みで、「ダイエット効果」「デトックス作用」があるというわけだ。
ちなみに使用するコーヒーは、専用に作られている無農薬有機栽培で育てたオーガニックコーヒーが望ましく、市販のインスタントコーヒーや自販機の缶コーヒーは使用しない方がいいといわれている。
■そもそも“宿便”など存在しない!?
代謝が良くなり、肥満改善、便秘の解消はもちろん、生活習慣病や、さらにはガン予防効果まであると、いいことばかりのように思えるこの「コーヒー浣腸」。ネット上でも、試して良かったという声が目につく。
しかし一方で、「そもそも“宿便”なんてものは存在しない」と、腸内環境に詳しい専門家は話す。
「腸の壁にこびりついた便が毒素を放って、体に悪影響をおよぼすという理屈ですが、大腸の壁はつねに粘液が分泌されていて便がこびりつきにくく、細胞の入れ替わるスピードが速いため、便が腐るまでこびりつくことはないのです。大量の便が出る=宿便と勘違いする人が多いものの、そもそも便の大半は大腸からはがれた粘膜でできているので、食事をしなくてもお通じはあるんです」