カルチャー
『日本とフィリピンを生きる子どもたち―ジャパニーズ・フィリピノ・チルドレン』著者・野口和恵さんインタビュー

父親に会えない、貧困、国籍… ジャパニーズ・フィリピノ・チルドレンが抱える問題

2016/01/09 15:00
野口和恵さん

 秋元才加、ラブリ・白濱亜嵐(GENERATIONS from EXILE TRIBE)姉弟、高橋ユウ・メアリージュン姉妹、ざわちん、池田エライザ……彼らの共通点が何かわかるだろうか。芸能人であることともうひとつ、日本人とフィリピン人の間に生まれた子ども、つまりジャパニーズ・フィリピノ・チルドレン(JFC)なのである。

 JFCの大半は父親が日本人、母親がフィリピン人だ。JFCの出生が急増したのは、バブル全盛期。日本に出稼ぎに来るフィリピン人女性や、商用や観光でフィリピンを訪れる日本人男性が増え、あちこちで日比の男女が出会うようになったことが背景にある。

 前述のように華やかな世界で活躍する者がいる一方で、JFCの中には、日本人の父親との関係が途絶え、母親とフィリピンに取り残されてしまった子も少なくない。その数は、10万人とも20万人ともいわれている。『日本とフィリピンを生きる子どもたち―ジャパニーズ・フィリピノ・チルドレン』(あけび書房)には、実父との再会を願い、貧困の中で懸命に生きるJFCたちの姿が描かれている。彼らはなぜ、父親と一緒に暮らすことができなかったのか。そして、そのことが彼らの生き方にどのような影響を与えたのか。著者の野口和恵さんに話を聞いた。

■「日本の家族に知られたくない」「目当てはお金じゃないか」

――日本でもフィリピンでも、厳しい環境に置かれている子が多いようですね。

野口和恵さん(以下、野口) フィリピンにいるJFCの家族は大半が貧しく、生活費にも困っています。JFCの支援機関である「JFCネットワーク」ではそうした母子に対して、父親探し、認知や養育費の請求といった法的支援を行っています。ただ、たとえ日本の父親と連絡がついても、「日本の家族に知られたくない」「本当に自分の子かわからない」「目当てはお金じゃないか」といった理由で、認知や支援を拒否されることが多いのが現実です。子どもがあらゆる手を尽くして、父親に会うために日本に来たのに、門前払いされた例もあります。

――自分の子どもなのに、ひどい話です。

野口 そうですね。私も当初、憤りを感じることが多かったです。けれど、JFCたちと接するうちに、彼らが父親のことをまったくといっていいほど憎んでいないことを知って、こちらの気持ちもだんだん変わっていきました。彼らは純粋に、お父さんに会いたいと願って、日本への想いを募らせています。その気持ちがなんとか報われてほしいと思います。

――なぜ憎まないのでしょう。

野口 まず母親が、子どもの前で父親のことを悪く言わないんです。JFCの母親たちは、本音では言いたいことが山ほどあっても、子どもの前ではそれを口にしません。家族を重んじるカトリックの教えが根底にあるのだと思います。フィリピンはほかのキリスト教国と比べても、家族への意識が特別に強いように感じます。

――取材でデリケートな部分に触れることが多かったと思いますが、相手が口を閉ざすことはありませんでしたか。

野口 フィリピン人はオープンなので、その点は助かりました。JFCたちも「自分の体験をシェアしたい」と、いろんな話をしてくれました。日本人の感覚からすると、そこまで話しちゃっていいのかな、というぐらいに。

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