“日テレ一強”に気を吐く、テレ朝『しくじり先生』『ぶっちゃけ寺』! バラエティの新動向
『世界の果てまでイッテQ!』『THE!鉄腕!DASH!!』(ともに日本テレビ系)が年間視聴率で1、2位となった2015年のバラエティ番組。めざましく活躍したタレントや話題になった新番組を、テレビウォッチャー・太田サトル&田幸和歌子が振り返る!
◎マツコと有吉の違い
田幸和歌子(以下、田幸) 今年のバラエティを振り返ると、ほとんど“一強”状態だったのがマツコ・デラックス。
太田サトル(以下、太田) 『5時に夢中!』(TOKYO MX)、『月曜から夜ふかし』『マツコ会議』(日本テレビ系)、『マツコの知らない世界』(TBS系)、『マツコ&有吉の怒り新党』『夜の巷を徘徊する』(テレビ朝日系)、『アウト×デラックス』『ホンマでっか!?TV』(フジテレビ系)と、レギュラー仕事だけで8本という多忙さはすごい。テレビで見ない日が本当にない活躍ぶり。
田幸 数年前には、マツコと有吉弘行の二強イメージがあったけど、有吉の番組にはアタリハズレがあるのに対して、マツコはハズレがないもんね。
太田 『マツコの知らない世界』でマツコが絶賛した商品が売れることでも話題になった。正直なリアクションが信頼されるから、マツコが「おいしい」と言えば本当においしい、という評価がすっかり定着したもんね。
田幸 あの番組、「スペシャリスト」の人選も良いんだよね。リサーチャーが頑張って探してくるのもあるんだろうけど、見事にけったいでクセのある人ばかり登場する。正直さという意味では、有吉も正直だし、どちらも「オファーは断らない」というスタンスが共通してるけど、有吉の方は、ノッてない仕事ではわかりやすく目が死んでる(笑)。
太田 以前はマツコの代役的ポジションのようだったミッツ・マングローブも、はやりものじゃなく、すっかり定着したね。
田幸 正直さへの信頼度なら、個人的には東野幸治も推したいところだけど。好感度の高い層がアラフォー男性などかなり局地的だから、あんまりお茶の間的じゃないのかもね。
◎ロックミュージシャンの生態が見たい
太田 お茶の間人気の安定感でいくと、日曜の日テレは不動の人気。ゴールデン帯のバラエティはほとんど視聴率2ケタだし、特に日曜日は『笑点』から2ケタ後半が続いて、チャンネルを変えさせない強さがある。
田幸 バラエティが「日テレ一強」と言われる中、ひとり気を吐いたのがテレ朝の『しくじり先生 俺みたいになるな!!』だね。
太田 テレ朝の場合、単発、深夜放送時代がすごく面白くて、ゴールデンに「昇格」した途端トーンダウンしてしまうことが多いだけに、不安もあったけど、オリエンタルラジオ・中田敦彦が「しくじり偉人伝」として、歴史上の偉人のしくじりを語るという、新たな活路を見いだした。人選や構成もうまいよね。
田幸 コンセプト的には、しくじりの反省を本人に促すかたちで『有吉反省会』(日本テレビ系)も近い。出演者によってクオリティに差があるけど、秀逸だったのは、「ロックミュージシャン」の回。PENICILLINのHAKUEIのビビリっぷりがキュートだったし、「ジーパンを洗わないから、臭い」GAOさんも最高だった。「これ、きたな。バラエティの引っ張りだこになるぞ」と思ったのに、その後、無風なのは不思議なくらい。
太田 (笑)。ロックミュージシャンの生態は、まだまだ深掘りしてほしいよね。一方で悲しいのは、『しくじり先生』のコンセプトを真似ただけのような、フジ系の『芸能人つまずきビッグデータ~世間のギモン 本人にぶつけよう! 私の告白カテにしてねSP~』。「他人の人生は自分の人生が失敗しないための実用書である!」というテーマらしいけど、プライド捨てて丸パクリしたわりに、話題にもならず。フジは、ことごとくやることが裏目に出る感じだね。
田幸 フジはドラマでも上層部から「『勇者ヨシヒコと魔王の城』(テレビ東京)みたいなやつを作れ!」とか露骨なパクリの指示があると、ドラマ業界の人に聞いたけど……。かつては時代をリードしていた局なだけに、さすがに悲しい。
太田 TBSでは『リンカーン』から続くダウンタウン枠的なポジションの、『水曜日のダウンタウン』が、見慣れたようなノリの「いつもの」な感じではなくて、結構実験的な企画が多くて新鮮な雰囲気だったかも。
田幸 なんでんかんでんの社長や高橋名人、井脇ノブ子とか、クセモノをたくさん集めて「We Are The World」を歌わせるというシュールな企画があって、いつも豪快な井脇ノブ子が、弱音を吐くという。
太田 英語の歌詞が覚えられないというね。「こんなつらい仕事は初めてじゃ」みたいな泣き言を言ってた(笑)。
◎テレ朝は地味にがんばってる
田幸 それから、テレ朝では『アメトーーク!』や『ロンドンハーツ』などが、さすがにピークを越した感もある中、地味ながら新たな鉱脈を掘り当てた感じなのが『お坊さんバラエティ ぶっちゃけ寺』。ありそうでなかったコンセプトだよね。
太田 テレ朝深夜では、10月にスタートした『あいつ今何してる?』も面白いね。これ、ゲストにとって音信不通となってる学生時代の同級生が今何をしてるのか、番組スタッフが徹底取材する“人探しバラエティ”だけど、いい味出してる素人がたくさん登場する。
田幸 丁寧な取材に定評がある鶴瓶の『A-Studio』(TBS系)のショボイ版みたいな感じだけど、それが良い。テレ朝は力の抜き方が上手だよね。
太田 ところで、今年のバラエティの顔といえば、なんといっても「安心してください、穿いてますよ」の、とにかく明るい安村。海外でも大ウケらしいよね。
田幸 とにかく明るい安村と、お盆で隠す「見えそうで見えない」芸のアキラ100%のコラボも良かった。小島よしおも、いまだに子どもには大ウケするみたいだし、ダチョウ倶楽部・上島竜兵やロバート・秋山竜次、江頭2:50、品川庄司・庄司智春など、裸芸人には時代や国を超える力があるんだろうね。
太田 ネタ番組が消滅し、一発屋芸人が生まれにくい時代になっているし、流行の移り変わりがますます早くなっている感もあるけど、16年にはどんな芸人が出てくるのかに注目したいね。