カルチャー
[連載]マンガ・日本メイ作劇場第41回

“女の体”を武器にのし上がる女王様――少女漫画的文脈から外れた『ダークネス』の惜しいところ

2016/01/03 19:00

 それまで、割合的には「セックスしなくても済むんじゃないか」という相手といたしてることの方が多い。しかも緋沙は、結構な勢いで寄ってくる男にたんかを切るので、なんらかの勝算でもあるのかと思えば、あっさり押し倒されて「くっ……」と悔しさをにじませ、男に弄ばれている。ねえ……そんなことなら最初からおとなしくしてた方がよかったんじゃない?

 緋沙は徹底して弱者である女の味方なので、一見かっこいい。でもとても先を見越して行動しているとは思えないのである。よく、女の体を「最終兵器」というけれど、緋沙ももうちょっと体を出し惜しみして、最終手段として使ってほしかったような……。それちょっと体使いすぎじゃないか? 「女」を売らなければ生きられない、戦後という厳しい時代だっただろう。だからこそ、貞節を守ってのし上がった方が、より知性が映えるというか、かっこいいというか……サービスシーンがないと読者的には不満かもしれないが。

 ただ、そんな緋沙にあこがれる一面がある。英会話のレッスンシーンで、緋沙は「すっかり白状した方が身のためよ」を英訳しろという質問にスラスラ答えているのだ。さすがダークな世界の女だけあり、彼女の語学力はすばらしい。筆者は、英語をかれこれ何年も勉強してるけれど、そんな英文習ったこともないし、どう言えばいいのかわからないぞ。緋沙……お前はやっぱりすごい女だ!

■メイ作判定
名作:迷作=2:8

和久井香菜子(わくい・かなこ)
ライター・イラストレーター、少女漫画研究家。『少女マンガで読み解く 乙女心のツボ』(カンゼン)が好評発売中。ネットゲーム『養殖中華屋さん』の企画をはじめ、語学テキストやテニス雑誌、ビジネス本まで幅広いジャンルで書き散らす。街で見かけたおかしな英文から英語を学ぶ「Henglish」主宰。

最終更新:2016/01/03 19:00
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