「BAILA」、女性ファッション誌にあるまじき“地味すぎるクリスマス”特集の狙いとは?
そんなTPPO特集の番外編には「職場のおじさんファッション川柳」が待ち受けています。ここにこそ、知的なおしゃれ哲学のヒントが隠されているのかと心して読み進めてみたのですが……まず、「アイシャドウ 紫にしたら 『目ェ殴られたん?』」(29歳・コンサルティング事務)に関しては、おじさんよりも紫のシャドウを殴られたと見間違うほど塗ってきた「29歳・コンサルティング事務」のセンスが心配になってしまいます。また、「ツッコミが もう止まらない! ボーダーTシャツ」(33歳・運輸)では、おじさんに「『ラガーマン?』『水兵さん?』はたまた『囚人?』と言いたい放題」言われたらしいのですが、五七五のルールを豪快に破る「33歳・運輸」のやりたい放題さが気になります。そしてなにより、筆者の乏しい脳みそでは「運輸×ボーダー」って、もうあの青と白のボーダーしか思い浮かびません!
ということで、いまいち知的な哲学の香りが漂ってこなかった本特集。川柳企画のクオリティから察するに、「正月休み中、実家のこたつでスルメとミカンをむしゃむしゃ食べながら読む」のには最適かもしれません。干場さん、これが本当のバイラーズ年末年始あるあるシーンですよ!
■自虐すら漂う12月24日の「BAILA」
続いては着回し企画「シーン映え『白』で好感度UP着まわし31days」です。昨年のクリスマスシーズンの着まわし企画同様、モデルの絵美里が登場しています。しかし、思い出されるのは、昨年のクリスマスイブのコーデ。普通の女性ファッション誌であれば、ここぞとばかりに男絡みのシチュエーションでのコーデを紹介しそうなものなのに、なぜか昨年は、ドランクドラゴン・鈴木拓を登場させ、イベント感を煙に巻いていました(2015年1月号レビュー参照)。今年の着まわし企画では、恋の予感があるのか!? 早速見ていきましょう。
今回の絵美里のプロフィールは「インテリアデザインを請け負う会社で働く29歳。(略)仕事ひとすじで恋愛はしばらくご無沙汰」だそう。また夢見がちな設定……1回ガチで「保険レディの29歳。担当区域は立川!」とか現実味のある設定でやってほしいです。やらないだろうなぁ。
そんな絵美里、12月15日に突如「年下のコージ君からLINEが。突然なんだろ?」と、早速恋愛フラグが。これは昨年と違い、期待が持てます。さらに19日には「引っ越すから家具を見立ててほしいと頼まれ、コージ君と買い物」。23日にはなんと「コージ君からLINEが3件。『25日空いていますか?』+スタンプ2つ。そんなに無邪気に誘われたら断りにくいなー」と絶好調。今年の絵美里は、なんだか順調に恋愛の最短経路を突き進む模様です。
……かと思いきや、24日「突如お局様に食事に誘われた」。25日「コージ君と映画へ。えっ、こんな結末なの?!」と、やはり年に一番盛り上がるクリスマスイブを普通に過ごし、特に告白もないまま正月休みへ突入します。おいおい……!! そもそも、思えばコージ君もお局様も絵美里を誘うのが遅すぎる。「こいつ、どうせクリスマス予定ないんだろうなあ」という同情の気配も漂います。
しかし、現実であれば、25日に告白がない時点で「脈なし」を察して身を引くところではあるものの、そこは絵美里。その後、1月8日に「ベテラン先輩ヨシコさんにコージ君という友達がいるって話をしたら『あんた、そういう人こそいいのよ!』って。え!そうなの!?」となり、着回し最終日である1月11日には、「気負わずに自然体で居られるコージ君が今の私に必要って気づいた」と、なぜか付き合いだしそうな雰囲気を伴って終了。絵美里、まだ告白もされてない上に、コージ君のことを好きという素振りすらなかったのに……! そもそも、コージ君は本当に絵美里のことが好きなの? とまたもや頭を悩ませます。
ということで、やはり誌面からも15周年っぽさは感じられず、平常運転だった「BAILA」1月号。15年は『こうして、思考は現実になる』(サンマーク出版)なんていう「こうなりたいと信じれば、それが現実にかなう」といった本もヒットしましたが、今月号の「BAILA」は、「こうなりたい!」よりも「はあ、なんとかしなきゃな……」という読後感がありました。ファッション川柳がその象徴ですが、どちらかというと自虐的で、必要以上に「自分たちsage」の側面が強かったように思います。いや、むしろこれこそ読者に“寄り添った”内容? そう考えると、読者との連帯感を編集部は意識しているのかもしれません。最近めっきり寒くなり、なんだか思考も衰えがちな今日この頃……。2月号はぱっと明るくなるような、豪華15周年特集を期待したいです。
(ルイーズ真梨子)